やがては漆黒に染められて (1/5)
黒子を抜いた青峰は、ボールを検討はずれな方向に飛ばした。
「なっ、なにやっとるんや青峰!」
今吉は彼を叱り飛ばしながら、ボールの行き先を追った。
そしてコートの選手やベンチにいる控え選手とカントクもみんな、ある一点を見つめて動かなかった
「直也、君…」
黒子の声が、嫌に響く。
「さあ、やろーぜ」
ただひとり、青峰大輝は楽しそうに笑っている。
「タ…タイム!」
リコは慌てて審判席に駆け寄った。
幸い、青峰の放ったボールがコート外に出たためリコの申請は直ぐに通った。
ピ───ッ
電子音が鳴り響き、一分間のカウントが始まる
「ちょっと藤井君どこ行ってたの!とにかくこっちき
『バカ言ってんじゃねぇよ大輝』
……藤井君?」
藤井は、リコの言葉なんて聞いてない。それどころか耳に入ってるかすら怪しい
オレはやんねぇよ。と、彼は持っていたボールを転がした。
『"命令違反"をするつもりはない』
「はっ、とんだ腰抜けになっちまったもんだな」
『んだと?』
藤井の口調が荒くなる
「いいからこいよ。時間がもったいねえ」
『だから、』
「ペナルティーならオレが全部受けてやるから。おまえの分もぜーんぶ」
『!』
「だからなんも心配イラねー。暴れようぜ直也」
それは、藤井にとってこれ以上にない甘言。
甘い、あまい言葉
『アホ峰…』
せっかく我慢してたのに。
そんなこと言われたら、やりたくなっちゃうじゃん。バスケ
「ちょっと藤井君ってば!」
『およっ?』
ぐんとリコに袖を引かれた藤井はバランスを崩してしまう
「ぼへっと立ってないで!作戦たてるよ!!」
『ちょっ、危な、あぶない』
リコは藤井の腕をがっつり抑えると、彼のカバンを持ってベンチへ急いだ
ピ───ッ
「タイムアウト終了です」
「あーっ、終わったぁ!?」
「しゃーねぇゃカントク。とりあえずオレらだけでなんとかするから」
「ごめんね日向君!皆もよろしくねっ」
「ああ、任せとけ」
『あだっ、カントク、こめかみイタタタタ』
「このくらいやられて当然よ!」
誠凛の選手もリコも困ったよう眉をひそめたが口角はほんのり上向きだった
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