それに影が加わり (4/5)
「終わったな……」
「さっきからもう一方的だ。見てらんねーわ」
誰かが口々につぶやく。
帰ってしまう観客がいるほどだ。その気持ち、わからなくもない
『40点差はどうあがいてもムリだ』
直也が電子タイマーを見ると、ちょうど六分を切ったところだった。
「思ったより早かったな、もう決まりだろ。自慢のパスも通じず、体力も尽き、火神もいない。ミスディレクションもとっくに切れた。もはや並の選手以下だ。オレの勝ちだ、テツ」
ドリブルをしながら黒子の傍に立った青峰は見下すように言い放った
「……まだ、終わってません」
息を切らしながら、黒子は彼を見上げる
「バスケに一発逆転はねぇよ、もう万に一つも……」
「……可能性がゼロになるとすれば、それは諦めた時です。どんなに無意味と思われても、自分からゼロにするのだけは嫌なんです」
──自分は、諦めてはいけないと昔教えられたことがある。
「だから諦めるのだけは絶対嫌だ!」
真剣そのものの黒子の気持は青峰だけでなく、誠凛メンバーの心までも動かした
「コラ、ベンチお通夜か!もっと」
「声だせ!最後まで」
日向と、ベンチの小金井が意気消沈している部員を焚き付けた
「中の選手が諦めてねーんだぞ。黙って見ててどーすんだ」
「……はいっ」
それから再び、応援の声が上がる
「一点でも多く縮めるぞ。走れよ最後まで」
「当たり前だろ」
選手にも、やる気が戻ってきた
「……一つだけ、認めてやるわ。諦めの悪さだけは」
こっそり口角を吊り上げた青峰は黒子の横を擦り抜けた。
ワンテンポ遅れて伸ばされた手は、空を切るばかりで何も掴めない
────シュッ
青峰はボールを放った
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