それに影が加わり (1/5)
「誠凛メンバーチェンジです」
選手用入場口の脇にこっそりイスを持ってきて陣取ると、なかなかよかった
『おお、これなら声も時々聞こえてくるぞ』
代わりにコート全体を見渡せ無くなったけど、オレにはこれぐらいがちょうどだと思う。自制がきく
ピッ
試合開始のホイッスルが鳴り歓声があがる。ちょうど伊月先輩がテツヤにボールを回したところだ。
『お、回転式パスかな』
火神君のところまでボールが真っ直ぐ跳ぶ。しかし大輝がすぐそこまで迫っていた。
────ビッ
シュートするかと思いきや、火神君はフリーの主将へとボールを投げる。
「決めてくださーい、主将ー!!」
ベンチから応援の声があがる。
するとパシャッ、とネットのゆれる音と得点が有ったことを知らせる機械音が耳に届いた。
『あれ?コレって後半初得点じゃね!?』
さすがテツヤ!と、シュートを決めた主将よりもテツヤをほめてやった。きっと彼を逐一ほめるヤツなんてオレくらいだ
『流れが変わるといーなー…』
なんて、来るはずもない未来を想像してしまう。逆転はムリでもいい試合ぐらいはできるんじゃないか、と。
『まあ無理なんだけど』
コートではテツヤがパスカットしてみと先輩へパス。
これで得点二連続だ
『ミスディレクション、か…』
ふと思う事がある。
自分の信念とスタイルを昔と変わらず貫き通すことは良いことだ。けど、今回ばかりはうまくいかない気がする。
キュッ…
テツヤは伊月先輩とアイコンタクトをする。
そろそろ、来るのかな…
───ギュワッ
ボールが回ってくれば、テツヤはボールを撃ち出す体勢に入る。
『イグナイトか…』
さあ、通るかな
.
prev|back|next