光 対 光 (2/5)
「運動において速さとは最高速だけではない。0からMAXへの加速力と、MAXから0への減速力、すなわち敏捷性(アジリティー)。青峰のそれはオレ達の中でもズバ抜けている」
『ああ、そうだったね』
全力で短距離走したら多分オレの方が速いけど、試合中では圧倒的に大輝が速い
『それにしても、12点差か…』
これからもっと、差は開くだろう
誠凛お得意の速攻で二点でも返せればいいが
「ボールが火神っちに!」
これならイケるだろうと会場が湧く。しかしそれをさせないのが帝光でエースを勤めた大輝だ
「ぬるいな」
火神がダンクを阻まれると、真太郎が呟いた。
それはシュートを失敗した火神君に対してか、それとも未だ手を抜いてる大輝に対しいてか
『どちらにせよ、こっからが本番だ』
「そうなると誠凛は…」
『テツヤ抜きじゃやってけないだろうね。ああ、でも後5分は保たせなきゃ』
どうせ使うなら万全な態勢であったほうが得策だ
「…そんな悠長な事、誠凛は言ってらんないっスよ藤井」
『え?』
「青峰っちが動き出した」
『!』
オレにもわかった。
無駄な力を全部抜いて、ゆらりと動き出した大輝が
─────ダムッ
それは一見ただのドリブルに見えるが、実はさっきまでと全然違う。
長いことヤツの練習相手になってたオレになら分かる。
『大輝が遊び出した…』
ここからはもうボールの主導権はヤツのものだ
「遊ばれてるっスね、火神っち」
「青峰の相手などまだ火神には速すぎたのだ」
手も足も出せずに圧倒される火神君が見える。
ああいう変則な動きはアメリカのストリートで見慣れてるだろうに
「させっかぁ!!!」
火神を抜いてゴール前にやってきた大輝の前には壁が3つ。
大輝はそれを全く意に介さない。
「ゴール裏側!?」
『入れるよ。大輝なら』
ヤツの辞書に"不可能"はない
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