これだけは譲れない (1/3)
『お、始まったー』
落下防止のため高めに作られた柵に体を預け試合を眺める。
ジャンプボールで試合が開始され、まず最初にボールを取ったのは桐皇の4番だった。
『確か名前は今吉…』
彼はドリブルであっという間にインサイドに入り込むと、ディフェンスに来たうちの主将をものともせずにノールックパスで9番にボールを送った。
────ヒュバッ!!
弱々しい顔の9番は変なフォームであっという間に3点入れてしまう。
『大輝なしでここまでとはな…』
「どうするのだ藤井。このままでは青峰が出る幕もなく誠凛はボロ負けするぞ」
『そんな事言ったってねえ』
オレにとってはアイツの命令の方が大事なんだ
「全国大会に行って、奴と会うんじゃなかったのか?」
『そりゃ会いたいさ』
会って、オレの実力を認めてもらいたいけど…
『でも、これ以上アイツに嫌われたくないから』
凄く我儘で唯我独尊な奴だけどいいところもいっぱい知ってる。それに、全国に行くためのチャンスはまだ冬にある。
「オマエがちゃんと考えてるなら、オレがとやかく言う権利はないが…」
それでも真太郎は心配そうにこっちを見てる。オレは彼の視線を感じながら試合を観戦した。
「っしゃコラ、どっっ……せ───い!!!」
桐皇の6番、若松という人はリバウンドで取ったボールを威勢のいい掛け声と共に放った。
その先には今吉がいる
───ヒュッ
『ダブルクラッチか!?』
これも、伊月先輩のディフェンスを抜けた。ずいぶんと姑息な手を使いよる
「……藤井、オマエは桐皇の対戦結果を見たことあるか?」
『え?ないけど……』
すると真太郎はポケットから紙を取り出した
「見てみろ」
『ん、』
その紙を広げて桐皇のスコアを目でなぞっていく。
どれもコレもトリプルスコアで…大輝がどの試合に出て、どの試合をサボったのかが分かる。
『一試合目が108対91で二試合目が151対72ってのは、どう考えても一試合目をサボったろ…大輝のヤツ』
「藤井、それも合ってるが今回は目の付けどころが違うのだよ」
もっとよく考えろと言われ、オレはまた紙に視線を落とした。
『桐皇もかなりの点数取られてるね』
ということはつまり、
『防御を捨てた攻撃型チームってことか…』
誠凛もバリバリ攻撃型だから、諸刃の剣同士の戦いになりそうな予感。
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