エスケープする (2/3)
「そろそろ時間よ。藤井君がまだ来てないけど…全員、準備はいいわね!?」
そわそわし出す選手を集めてリコは鼓舞するように語りだす
「大事な初戦よ!!何度も言うけど、I・Hに行けるのは4校中3校!小金井君も前に言ってたけど、一見難しくなさそうにも見えるわ……けど」
「んっ……!?えっ!?何!?ちょっ、水戸…伊月!?」
突然、小金井は水戸部と伊月に取り押さえられた。リコはどこからかハリセンをとりだし、そして…
「なめんなー!!!」
「へぶっっ」
パァンッ!!!と盛大に音を立ててカントクは小金井の左頬をハリセンでひっ叩いた。
「リーグ戦だから一敗までは大丈夫……とかそんなこと少しでも考えたらおしまいよ。大事なのは今!この試合よ!!なのにサボるとか、いったい何考えてるのかしら藤井君は!?」
「なんで!!なんで今オレはたかれたの?ねえ八つ当たりなの!?しかもそのハリセン前オレが作ったやつなのにっっ」
叩かれた左頬を押さえながら小金井は涙目で水戸部に愚痴っていた。
「"次頑張る"は決意じゃなくて言い訳だからね!そんなんじゃ次もダメよ!!」
「絶対勝つぞ!!誠凛───ファイ!!」
「「「オオ!!!」」」
気合いを入れて控え室を後にする。
未だ不安材料は抱えたままで
***
『おー、でてきた』
誠凛バスケ部に多大な迷惑を現在進行形でかけている直也は2階の観客席後方の、一番出入口に近い場所に立っていた。
『皆緊張してんなー…って、あれ?』
現在地の反対側に、よく見知った緑頭を見つけた。
1人で居るようだから声をかけてみよう
『真ちゃん!』
「!」
後ろからオレに声をかけられて、真太郎は肩を震わせた。
.
prev|back|next