ウソだといってくれ (3/3)
「あり?火神は?」
オレの、試合に出る出ないの話が一段落した時、火神君がいないことに気付いた。
「あー……」
『あー?』
伊月先輩が指差す方を目で追い掛けると、ロッカーにもたれ掛かって寝息を立てる火神君の姿があった。
「ちょっコラ火神!!寝たら体固まっちゃうでしょーが!」
「まぁ……ほっとけよ」
『いい寝息たててるじゃないですか』
それは、穏やかな顔だった。
「試合の後、珍しく凹んでたからな」
「4ファウルで抜けたからだろー?気にすることねーのに」
「小金井、ラスト抜けたのは予定外だったけどね」
「う…」
土田先輩のダメ出しに小金井先輩は何も言えない……いや言えるわけがない。
実際、オレとテツヤがいなかったらどうなっていたか
「こいつなりに責任感じてんじゃねーの?それにただ寝てるってゆーより……次の試合に備えて最後の一滴まで力を溜めてるように見えるからな」
『でも、あの体勢はねぇよ…』
サポーターとテープをカントクに手渡しながらオレは思う。
「すいません、ちょっとトイレに行ってきます」
「あ、オレもいっとこ」
『いってら』
カントクにテーピングを施されながら、2人に手を振った
「ところで」
『はい?』
サポーターをし終わると、カントクが険しい表情を向けてきた。
「今日はずいぶんと好戦的だったじゃない」
『あー、それは……』
オレもそろそろ本気になっとこうと思いまして
「本気に?」
カントクさんの眉がぴくりと動く。
『オレの目的は全国制覇ですから』
そして、アイツに認めさせてやるんだ
「"オレの"、ね……」
『……ちょっと外で体動かしてきます』
膝の状況を確認するため
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