オレと君との温度差 (4/5)
「日向さん死んじゃいますよー」
そんな様子を見ていたさつきは呑気な声を上げた
「えっ、なんでオレの名前を……」
「知ってますよー。誠凛バスケ部主将でクラッチシューター日向さん。イーグルアイを持つPG、伊月さん。無口な仕事人でフックシューター水戸部さん。小金井さんと土田さん」
「「あれっ!?そんだけ!?」」
『短ッ』
名前以外何もない二人。
あの桃井さつきが調べても得られる情報が名前だけって…この2人どんだけー
「ギリギリBのカントク、リコさん」
「ふざけんなぁ!!なんで知ってるの!?」
遠い目をしてカントクの情報を口にする。
そっかぁ…ギリギリBなんだぁ…
どおりで色気が感じないはずだ
「それと、バスケから逃げ出した弱虫直也君」
『なっ!』
なんてキャッチコピーを付けてくれるんだ
「まさかまたバスケやってたなんてね」
オレを見つめるさつきの目は、先ほどと打って変わって冷徹なものに変わった。
『アンタには関係ねぇよ』
「関係無いかもしれないけれど、アタシはまだ許してないんだからね」
苦楽を共にしてきて、それでいてマネージャーとしてあんなに尽くしてあげたのに辞めるなんて。
と、彼女は揺るがない口調で言う。
「背番号とられたくらいで辞めちゃうなんて、ちょっとズルいと思う」
弱虫だねと、さつきの口が動く
『オレが部活を辞めた理由はそこじゃねぇよ』
二軍落ちしてそこの奴らに虐められたからとか、二軍落ちした自分を認めたくなかったとか、そういうつまらない理由がある分けない。
「じゃあなに?」
『さつきに言う必要あるのか?』
だんだん雲行きが怪しくなっていく
しかし一度始まってしまった口論は止まらない。
黙ってオレらの会話に耳を傾ける先輩方に申し訳なく思う。
「……そうやって、」
『あ?』
「そうやっていつも直也君は何にも教えてくれない!」
語調を荒げたさつきの顔は次第に怒りへと変わり、やがて目にはほんのり涙が。
「辞めた理由も、二軍に行った理由も、そしてまたバスケを始めた理由も、なんにも教えてくれない!!みんな、口に出さないだけで凄く心配してるのに!」
「桃井さん落ち着いて。いくら聞いても藤井君は答えませんよ。彼が頑固なの、あなたならよく知ってるじゃないですか」
「………ごめん」
テツヤになだめられて、さつきはようやく落ち着きを取り戻した。
そっか。勝手に辞めちゃったオレのこと、皆そんな風に思ってるのか。
隣に立つテツヤも。
「いえ。謝るなら藤井君に」
『や、オレは別に……』
謝らなきゃいけないほど、さつきは悪いことしてない
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