これで最後 (2/4)
『高尾君はね、先輩。常に全体を見てるからテツヤを風景のようにとらえてるんです』
そのためミスディレクションが効かない
『だから高尾君には逆の誘導を入れる必要があります』
「するとどうなるの?」
『テツヤに集中することによって、高尾君の視野はぐっと狭まります』
そしたら、いつものようにミスディレクションを使うだけ。
『あとか高尾君が勝手に混乱してくれますから』
ほら、と高尾を指差す。
彼はテツヤを見失ってあたふたしていた。
「本当だ、すぐ後ろにいる黒子に気付いてない」
つまり、
『絶好のチャンスだ』
─────バキュアッ
テツヤの、加速するパスが炸裂。
高尾君も察知して手を伸ばしたがボールには触れられ無かった。
「火神、痛そうだね」
小金井先輩が自分の手を擦って顔を引きつらせた。
「絶対に行かせん!!」
ゴールに向かう火神の前に真太郎が立ち塞がった。
あれは、超跳躍を使わないと倒せない。
「うぉおおお!!!」
──────ガツン!
『お見事…』
火神はオレの予想通り、ラスト一回のジャンプをここで見せてきた。
「アイツ、大丈夫なのかよ…?」
『大丈夫じゃないと思いますよ』
「え…」
でもね小金井先輩。
『あのダンクは、チームにとって大きな影響力になります』
なんてったって、「キセキの世代」である緑間真太郎をぶっ飛ばしたんだから
だから、
『こっからの誠凜は強いっすよ』
その証拠に、主将のスリーがよく決まる。
「うおお、きたぁあ!!」
「あのダンクから誠凛が盛り返してきた」
「すげぇ、ついに2ゴール差まで……」
ギャラリーが騒がしくなったのを感じてスコアボードを見れば74対78。
逆転も不可能じゃない
『でもあと3分…』
このまま真太郎が黙ったままなんてあり得ない
『これは一筋縄ではいかないな』
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