冷静になれよ (3/3)
「黒子の新しいパス……!?」
「なんで今まで……」
言わなかったんだ。と先輩達は疑問を持つ。
『見せる機会が無かったからね』
「それもありまし、捕れる人が限られるんです……けど、今の火神君なら捕れるかもしれません」
『火神?オレじゃダメなの?』
コートで暴れまくった火神君。
息が切れ切れな彼はどう見ても試合終了まで保ちそうにない。
「藤井君の足も、もう限界が来てるんじゃないですか?」
『う……』
さすが人間観察を趣味に持つ男、黒子テツヤ。
なんでもお見通しだった。
「膝、痛むのか?」
主将が心配してくれる。
『……走れないほどじゃないです』
「でも痛みは感じるわけね」
『いや、カントクあの…
「あるのね?」
………はい』
カントクには、隠し通せなかった。
「なら、やっぱ藤井は引っ込めるしかないな」
「そうね日向君」
そして皆の視線は火神に向かう。
つまりこの試合、すべての鍵を握るのは彼なのだ。
「…でもパスが火神君だけでは最後までもちません。やはり高尾君のマークを外して通常のパスも必要です」
「あ……」
「けどもういけんじゃね?オレの目もつられそうだし」
第3Qであんなことがあれば、もうテツヤの存在を忘れてるに違いない。
「火神君!!あと何回跳べる?」
「跳ぶ……?」
「緑間を止めたあの超跳躍のことか?」
「あれは天性のバネを極限まで使うから消耗がハンパないのよ。加えて火神君はまだ体ができてない。一試合で使える回数は限られてるわ。本人も気づいてるはずよ。でしょ?」
「そんなん……跳べるぜです何回でも……」
『んなわけあるか、阿呆』
「あのね……今は強がりとかいーから!」
自分のできる事とできない事の分別ぐらいはできるようになってほいしと、つくづく思う。
「よくて……2回ね。筋力値から推測するとこれが限界ね。もし2回目を跳んだら、あとはコートに立ってるだけで精一杯だと思うわ」
『あら、意外と少ない』
あともう一回くらいはいけそうなのに。
火神君の足は、オレの想像以上にギリギリだったようだ
「2回……でどうやって緑間を止めれば……」
「1回は勝負所にとっておいて、もう1回は……」
『初っぱなからかましますか!』
たった二回のチャンスを最大に生かすためには、やることは1つ。
「第4Q最初のシュートをひっぱたけ!!」
ちょうど、インターバル終了のブザーが鳴った。
.
prev|back|next