冷静になれよ (2/3)
「くそ」
「火神、熱くなりすぎだ。もっと周り見ろよ」
ベンチに戻って、まず火神への説教から始まった
「そうだ、それにさっきのは行くとこじゃねーだろ!一度戻して……」
「戻してパス回してどうすんだよ」
「あ?」
「現状、秀徳と渡り合えるのはオレだけだろ。今必要なのはチームプレーじゃねー。オレが点を取ることだ」
『ほぉ…"オレだけ"ねぇ』
言うねぇ。
ついさっき才能が開花したばかりの奴が随分とまぁペラペラと。
「オイ、なんだそれ」
「それと自己中は違うだろ」
火神の両端に座っていた伊月先輩と主将が立ち上がる。
場の雰囲気はまさに一触即発
『あ、テッ………』
────ガッッ
テツヤはオレの制止も聞かず、わりと容赦なく火神を殴り飛ばした。
「黒子君!?」
『うわー…やりすぎ』
頬っぺたつねるぐらいでいいんじゃないかって思ったけど、無意識のうちに堅く握りしめてた自分の右手を見たらそれ以上何も言えなかった
「黒子テメェ!!」
「バスケは一人でやるものじゃないでしょう」
「みんなで仲良くがんばりゃ負けてもいいのかよ!?勝たなきゃ何のイミもねぇよ」
「一人で勝ってもイミなんかないだろ。「キセキの世代」倒すって言ってたのに彼らと同じ考えでどうすんだ」
敬語が外れてるテツヤは、かなり怒っていた。
「今の、お互いを信頼できない状態で仮に秀徳を倒せたとしても、きっと誰も嬉しくないです」
「甘っちょろい事言ってんなよ!そんなん勝てなきゃただのキレイ事だろーが!!」
火神君はテツヤを殴り返した
痛そうな音が響く
『あ!火神テメェ!!』
「何だよ!殴り返したオレのほうが悪いってのかよ!?」
『悪いに決まってる!』
「なんだと………!」
火神がオレの胸ぐらを掴み掛かろうと手を伸ばした。
しかしその手はオレと火神の間に割って入ったテツヤに阻まれてしまった。
「……じゃあ「勝利」ってなんですか。試合終了した時、どんなに相手より多く点を取っていても、嬉しくなければそれは「勝利」じゃない!」
火神の目が見開かれる。
何か大事なコトでも思い出したのだろうか
「……別に負けたいわけじゃないって!ただ一人できばることはねーってだけだよ」
『そうそう。何のために5人いると思ってんのさ』
「つかなんか異論……あるか?」
「そんなん……ねぇ…いや…悪かった。勝った時嬉しい方がいいに決まってるわ」
ようやく目が覚めたのか、火神の目は曇ってはいなかった。
「さ……て、黒子のおかげで火神の頭が冷えたのはいいとして、ピンチは変わってねーけど……どうする?」
「すいません、一つ……今なら使えるかもしれません。ボクにできるのはボールをまわすだけです……けど、もう一段階上があります」
『アレをやるのか』
「「「「「アレ?」」」」」
テツヤの技の1つ。
普通の人なら、止めることはおろか触れることさえ難しい。
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