2年秋、黄瀬は (5/6)
「直也、パス!」
「え、ええっ?」
青峰っちが知らない名前を叫んだ。誰だろうかと一瞬思案してると、ボールはオレの腕に当たった。
「あ、スマン黄瀬」
「いったー」
痛む腕を気にしてたら、ボールは相手チームに奪われてしまった。
「あー、青ちんペナルティーくらうよね」
「自業自得なのだよ」
「バカですね青峰君」
「うっせぇな」
なぜか、
パスをとり損ねたオレじゃなくて青峰っちが責められてた。
何故だ
***
「ねー青峰っち、直也って誰っスか?」
練習試合が終わった後、オレは尋ねた。
「あー」
「?」
「それは…」
青峰っちはすごくいいづらそうに頭を掻いて目を逸らす。隠し事してることがバレバレだ。
「まあいいじゃないですか黄瀬君。終わったコトなんですから」
「ぅわあ!黒子っちいつからそこに!?」
「黄瀬君が「ねー青峰っち」って言ったところからずっと君の隣にいましたよ」
「気付かなかったっス!ごめん黒子っち!!」
手を合わせて頭を下げる。
すると気にしてませんよと返って来た。
「そんなことより黄瀬君モップが出しっぱなしですよ」
「あ、いっけね」
掃除で使いっぱなしだった用具が床に転がっていた。
「じゃなくって。話を逸らさないでほしいっス」
「なんでもいいじゃねえかよ。そらさっさと行け」
シッシ、と手で払われる。
「ぶー」
「止めろキモい」
「ひどっ」
「まあ諦めてください」
黒子っちがきっぱり言う。
青峰っちも口を閉じてもう喋りそうにない。
つまり、何を聞いてもこれ以上の情報は得られないということ
「ケチ…」
教えてくれない
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