手の内は隠さず (1/3)
「今のまま行く……?
タイムアウトとって、ベンチに帰ってくるなり火神君が言ったのだ。
まだ交代は早いと。
「火神君はともかく……高尾君にはミスディレクションは効かないのよ?大丈夫?」
「大丈夫じゃないです。困りました」
「うん……そう、てかオイ!」
どーすんだ!とカントクがノリツッコミをする。
しかし状況が状況なだけに上手くシまらない。
『無理はいけないぞ』
これは個人の問題だけではなく、チームの士気にも影響がでるから。
「けど……できれば第1Q残り3分半、このまま出してもらえないですか?」
「!?」
「直也君の膝も、もう少し休ませないと」
『テツヤ……』
その優しさが、嬉しく思った。
「T・O終了です」
ブザーが鳴る。
もう話し合ってる暇はない
『カントク、決断を』
「……わかった。任せるわよ!二人共」
じっくり悩んだ末、続行という判断が下る。
オレもそれでいいと思う。
「黒子、なんか考えてんのかな…」
福田君がぼそりと呟いた。
『たぶん、全然考えてないよ』
「ええ!?」
「じゃあなんで出たいなんて言ったんだ!?」
『さあ?』
テツヤの考えてることなんて正確にわかるはず無い。けど、アイツは何かをしながら考えるの得意だから、試合に出てればきっと打開策を掴んで帰ってきてくれるはず。
『今は絶賛模索中みたいだけど』
その証拠に、テツヤはまた高尾君にスティールをされていた。
おまけに真太郎がセンターラインから華麗にシュートを決めてみせる。
『(完全に秀徳のペース…)』
すると火神君が独りアリウープで点差を縮める。
でもまた離される。
そんな攻防が暫く続いた。
『あと3秒…』
ボールは真太郎の手のなかに。
リングからあんなと多くにいるのにボールを受け取ってしまって、どうするのだろう。
いやな予感がする
────シュッ!
「オレのシュート範囲はコート全てだ」
怖れていたことが、現実になってしまった。
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