1年秋、紫青緑と (2/6)
「はい休憩ー。みなさん各自昼食をとってください。練習再開は一時でーす」
さつきが、若干震えた声で先輩マネージャーから言われたとおりに復唱した。
大輝の幼なじみの彼女は最近よく一軍でマネ業に勤(いそ)しんでる。多分3年が引退した後、さつきが一軍に来ることになるんだと思う。
『敦ーメシだってよ』
「あ、うん待って。今お弁当持ってくる」
成長期真っ只中の敦は重箱のようなでっかい弁当を持ってきた。
よく食うよホント。
「遅ーよ紫原」
「青ちんごめん」
「あそこで食べるのだよ」
『そうだね』
じゃあ食べようか。
オレたちはステージ中央を陣取った。一年生ながらそれができるのはレギュラー故。
「今日は何を作って来たの?」
『チョコブラウニー』
「また甘いもんかよ」
『糖分は疲れにいいんだよ』
「食べ過ぎもどうかと思うが」
『おしるこ三昧の真太郎は食べなくても良いんだよ?』
「誰も食べないとは言ってないのだよ」
「素直じゃねぇな緑間。お、一番でかいのもーらい」
紙皿に分ける前に、大輝はタッパーに手を突っ込んで取って食べてしまった。
「あ!青ちんそれオレの」
「早い者勝ち」
ブスくれる敦とドヤ顔の大輝。
「いいよ、あとはみんなオレのだから」
敦はタッパーごと自分の方に寄せてしまった。
『真太郎もまだ食べてないんだから一つくらい残しとけよ敦』
「そもそも、おやつは昼食を食べてからにしたらどうだ青峰に紫原」
大輝と敦はブラウニーの取り合いを地味に続けてる。
オレと真太郎は自分のお弁当をテキパキと腹に収めていく。食い意地の張った2人に食べられる前に。
「バーカ。チョコ、弁当、チョコの順に食ってくに決まってんだろ」
「藤井ちんが作ったのはみんな別腹だから大丈夫」
『いや、チョコ食った後の白米はキツいぞ』
こうやって何度も忠告してやってるのに、つまらない争いをする二人にはほとほと呆れる。
『言うこと聞けねーならもう作んないかんな』
「「ごめんなさい」」
聞き分けのないガキ二人には、コレが一番効く。
喜ぶ顔が楽しみで
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