死線を越える (2/4)
『(!!!)』
一口食べて全てを悟った。
これは不味いおカユのようにしっとりと柔らかい米!!サラダのようにシャキシャキと火の通ってない野菜達!てゆうか生肉!
『(そしてルーには謎の苦味と酸味!!)』
そう思ってるのはオレだけではないはず。どうしよう意識がだんだんうすれて……
「おかわりジャンジャン言ってね!」
『(しかも寸胴ォ!?)』
大きな寸胴鍋でカレーがグツグツいってる。アレを全部食べろと?
「何コレ!?」
「ヤバくね!?飲みこめねぇ…!」
『水で流し込むといいですよ』
ヒソヒソと会話しながらオレたち皆で必死にカレーを食べるが、壮絶な味に誰も飲み込む事ができない。
「やっぱりあんまり…おいしくない、っかな……」
『カントク…』
カントクは、たくさん絆創膏が貼られた両手を後ろに隠してシュンとしてしまった。
違うよカントク。あなたがオレらのために一生懸命努力してくれたってことは分かってる。
『(しかしコレは流石に…)───!』
何を思ったのか、主将がいきなりガツガツと食べ始めた。
そして勢いよく残りのカレーも口の中へ運んでしまって完食する。
「ごっそさん。うまかったけど、ちょっと辛かったから。飲み物買ってくるわ」
それだけ告げると主将は家庭科室から出て行った。
「味は個性的だけどイケるよ。料理に一番大事なもんは入ってる。愛情がな。けど、もしかしたら作り方がどっか間違ってるかもな。もう一回作ってみないか?」
「……うん」
鉄平さんも、もう一度作ってみるように優しく諭しながら二杯目に手を伸ばす。
『(オトコマエだよ先輩!!)』
なんて素敵な先輩方なんだ。
カントクが幸せ者過ぎる
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