一難去ってまた一難 (3/3)
「ま、それはいいとして」
「全員!もっかい!!集合──う!!!」
『!?』
主将の声が体育館中に響き渡る。
今度はなんだ。
「なんすか一体?今日はもう練習終わりじゃ……」
「いいか、さっき合宿の話が出たがそれにあたって……オレ達は今重大な危機に直面している」
『?』
先輩方は凄く深刻な顔をしてるけど、オレにはいまいち分からない。
「今年、合宿を2回やるために宿は格安の民宿にした。よって食事は自炊だ……が、問題はここからだ。カントクがメシを作る!」
『へえ』
だからどうしたと、言いたい。
「え?ダメ…なんですか?」
「あたり前だ!レモンはちみつ漬けとか見たろ!!つまりその……察しろ!!」
「「「……!!」」」
『えっ、なになにどういうこと?』
レモンはちみつ漬けとか記憶に無いんですが。もしかしてオレがサボタージュした試合ん時に何かあったんですか。
「料理の域はもはや完全に越えてたな」
『(それってつまり食食べ物じゃないってこと…)』
あのド天然な鉄平さんがウケをねらって喋るわけないから、多分言ってることは本気。
「じゃあ自分らが作ればいいんじゃ?」
「そうしたいのはヤマヤマなんだが……練習メニューが殺人的すぎて夜は誰もまともに動けん!!キツさハンパない!」
「ヤベ、思い出したら吐き気が」
先輩達の顔がみるみる青くなっていく。そんなに酷いんですか、カントクの料理の腕前ってのは。
『(遺書を書いておこう。)』
絶望してる様子見てたら、自分は無事生還できないんじゃないかって思えてきた。
「……つーわけでな」
"カントクの腕前強化訓練を行う"
主将はしごく真面目な顔で言った。今度の土曜に練習休みにしてやるらしい。
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