ねらい (1/4)
ある日、スキップして帰ってきたカントクは皆を集めて言った。
「明日から三日連続、練習試合を組んだわ」
『嫌な予感がするんですが』
すると気のせいよと返ってきた。
「練習試合?夏休み直前になんでまた……?」
「今のみんなの課題をより明確にするためにね!そして夏休みは楽しくみっちり猛練習ってワケよ」
『うわぁ〜』
口に手を当ててウフフフ、とカントクはにこやかに笑う。これは気のせいではない。
「だから今回は試合に勝つ!だけじゃなくて、考えてプレイすることを意識してね!」
「「「オウ!!!」」」
試合ひとつに対してもしっかり目標をつけるとは、ぬかりないな。
「それじゃあ片付け開始!」
短いホイッスルの音を合図に部員は散らばった。
オレは記録をいろいろつけたノートをカントクに渡しに行く。
『カントク、これ今日の分です』
「いつもホントありがとねー。藤井君も練習あるのに雑用押し付けちゃって」
『いえいえ』
細かい作業とか嫌いじゃないし。
するとそこに鉄平さんが近づいてきた。
「なあリコ、一つ頼みがあんだけど」
鉄平さんはある提案をした。
「……え?」
『それ、本気ですか?』
あまりにそれは、突拍子もなく。
***
「都ベスト4だかなんだか知らねーが…ナメたことしてくれんじゃねーか」
目の前にいるのはゴツくて屈強そうな男達。
「なあ降旗……オレ達一年だってそりゃあ試合に出たいさ。ユニフォームも一応もらってるし」
「ああ」
「けど、これはさ?いきなりすぎるよな?」
対してこちらは気弱でなよなよしている3人組。
そして、
「スタメン全員一年とはな!」
そう、今回の練習試合は一年だけでやるつもりらしい。
ちなみにオレはベンチスタート。頃合いを見計らってテツヤと代わるつもりだ。
「カチンと来たぜマジ。ボロカスに負かして追い帰すぞ!!」
「オウ!!」
もちろん相手チームはご立腹。
あの3人組が痛い目見ないことを願うばかりだ。
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