対面と印象 (4/4)
『けっこう激しいなー…』
攻防の入れ代わりが速い火神君と鉄平さんの1対1。
「おおっ」
火神君を振り切って鉄平さんはレイアップ。体がでかいわりに、鉄平さんは素早かった。
『……けど、』
火神君がシュートをひっぱたいた。
「すげぇっ……!!」
「どっちも譲らない……互角!?」
二人のなかなかいい勝負に、全員目が離せない。
でも、
『(押してるのは火神君………ん?)』
鉄平さんの足元に、ちょっと信じられない物を見た。
『………わざと?』
素だったら、それはそれで問題だと思う。
「フウ……想像以上にしんどいな」
ボールを持った火神君と鉄平さんが対峙する。
───きゅっ
ダムッ!
「抜いた!?」
「まだだ」
ジャンプシュートのために飛ぶが、鉄平さんも十分反応が良かった。
『これなら……!!』
────ガッ!
火神君は空中で向きを変え、ボールをリングに叩き入れた。
「何!?」
「すげえっっ!!あそこで裏からダンク!?」
「火神の……勝ちだ!!」
そりゃあそうだろうよ。と、オレは思う
「ふぃ──、参った!オレの負けだ。約束通り、スタメンはキミだ」
「ウス」
「ちょっと、」
「……じゃあ、オレ先上がります。おつかれす」
火神君は勝負を終えると、さっさと出ていってしまった。
「なっ……何考えてんだよ木吉!!」
「いやー強いなアイツ」
「じゃなくて!!アンタ外れてどーすんのよ!?」
カントクは鉄平の背中をハリセンで叩く。たいして痛い素振りを見せてないところから考えるに、相当慣れてるようだ。
「しょうがねぇだろ。ブランクなんて言い訳になんねーし、これが実力だ」
「"実力だ"じゃねーよ。ボケすぎだ、足元見ろ!練習中から何か変だと思ったんだよ。お前ソレ上履きじゃねーかダァホ!」
『あ、主将も気付いてましたか』
いつからかは知らないけど火神君との試合中はずっと、かかとぺしゃんこの上履きを履いてた。
「「「えええ!?そんな動きづらいので!?」」」
「ったく……まさかわざと負けたんじゃねーだろーな」
『ねぇ、』
「……いっけね!」
「素かい!!」
「……っもう!」
もう呆れてモノもいえないよ。
オレ、この人とちゃんと付き合っていけるかな。
すごく心配になった。
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