対面と印象 (1/4)
キュッ、キュッ、ダム。
テツヤが木吉鉄平と言う人に会ったらしい日から早1週間。
放課後の体育館にはいつもと変わらぬ軽快な音が跳ね返る
「チワス」
掃除が長引いて部活に遅れた火神君がやっと来た。
『久しぶりー』
「おー火神!足はもういいのか?」
「ウス」
火神君は体育の授業も見学してたから、こうやって言葉を交わすのも本当に久しぶりだった。
「足はいいけどオマエ!来いよ練習!なんかあったのか?」
「…………すんません」
『おおう?』
いつもなら直ぐに下手な敬語でヘタな言い訳をするのに、今日は素直に謝っただけだった。
なんか、違和感。
「!?いやだから!謝るぐらいならちゃんと……!」
「ウィース」
主将の言葉を遮るように、また体育館に一人やってきた。
「さあ、練習しようぜ」
現れたのはユニフォーム姿のデカい人。
『どちら様?』
先輩方も無言だし。
もしかして全くの知らない人なんじゃ……
「「え〜と、久しぶりだな木吉」」
「オウ!」
『この人が!?』
「いやなんでユニフォームだよオマエ!?」
練習にその格好で挑む人、オレ初めて見たよ。
「ひさしぶりの練習でテンション上がっちまってよ」
「やる気あんのか?
あんのか!」
主将が凄い勢いで突っ込んでる。
『……とりあえず、着替えてきたらどうですか』
じゃないと話が進みそうにありません
***
「去年の夏からちょっとワケあって入院しててさ、手術とリハビリで今まで休んでたんだ。木吉鉄平、193cm、81kg、ポジションはC。よろしくな」
数分後、着替え終わった木吉さんは簡単な自己紹介をしてくれた。
『(この人が誠凛バスケ部を創った人か…)』
とてもそうは見えないのだけど。
「鉄平!もう大丈夫なのね?」
「ああ!もう完璧治ったよ。ブランクはあるけどな。でも入院中何もしてなかったわけじゃねぇよ」
「何か学んだのか?」
自信有りげな木吉さんに、伊月先輩が問いかけた。
「ああ、花札をな。同室のじいちゃんから」
暫く沈黙が続く。
「「「
だから!?」」」
「面白いぜ。コイコイの時のあのスリル!」
「「「
バスケ関係ねぇじゃん!!」」」
花札でここまで真剣に喋る人、そうはいないぜ。
マジでなにこの人。
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