誕生日小話 | ナノ
花宮真



一月の中旬ともなれば寒さは一層厳しくなるもので、マフラーとコートが手放せなくなった。
寒さのせいで、学校から駅までの数十分の距離がいつも以上に遠く感じる。はやく電車に乗って暖を取りたい。


「あ、そうだ。今年の誕生日プレゼントはイヤーマフでいいよね」

「却下だ」

「えー……」


どうして?と聞くが、ダメなものはダメだと言って花宮は顔を縦に振ろうとはしてくれなかった。だって去年は手編みマフラーで一昨年は部活中でもつけられるようにと指先がない手袋をプレゼントした。
最初はなんだかんだと文句を言ってたけど結局使ってくれていたし。今回も使えそうな物を、と考えたのだ。だってこれだけ寒いんだもの、今手元にあって嬉しいものといったら防寒具でしょ。


「イヤーマフってあれだろ?ヘッドホンみたいなやつ」

「そう、それ」

「じゃあやっぱり却下だ」

「私もそれ以外思いつかないから却下を却下」

「てめ…」


ピキッ、と隣を歩く花宮の顔に青筋が立った。こんなことでいちいち苛ついてたら血管切れちゃうよ、って浮き出たそれを指でなぞった。
寒さで冷えきった指先の冷たさにビックリしたのか、肩がビクリと震えた。


「ほらやっぱり寒いんじゃない?」

「寒くねぇよ」

「やせ我慢は体に毒だよ」


これから駅に向かうんだしせっかくだから駅ビルで買ってあげるからさあ、と花宮の腕に自分の腕を絡める。
ねぇ花宮くーん、と精一杯の猫なで声と上目遣いで攻めてみたが効果ない。こんなに彼女がなんかしてあげるって言ってるんだからさあ。


「……原くんはイヤーマフ貰ったなら嬉しいって言ってた!」

「じゃあ原に買ってやれ」

「……原くんの誕生日知らないし」


くそ、この作戦でもだめか。
他の男なら喜ぶもん!と言えば花宮だって嫉妬のひとつやふたつしてくれると思ったんだがな。


「そもそもなんでオレの誕生日の贈り物で、そんな不本意なもん貰わなきゃいけねえんだよ。バカ」

「うーん…それもそうねぇ」


冷静になって考えてみれば可笑しな話よね。いらないって言う相手に無理やりモノを押しつけるのって。
イヤーマフが妙案過ぎて猪突猛進過ぎたわ。うわー恥ずかし。


「じゃあ改めて聞きます。花宮は何が欲しいですか誕生日に」

「ない」

「うん分かった。でも私のお財布事情を考慮したプレゼント……ぇええぇえないの!!?」


てっきり私の財力では買えないとんでもないの要求されるかと思った。だって花宮君だし。どうしよう無理だよって泣き喚く私をおかずにするような鬼畜花宮君だし。


「勘違いするなよ?オレの欲しいもんはもう手に入ってるだけだ」


ふはっ、と変な笑い方をして花宮は私の頭を乱暴に掻き混ぜた。ああもうせっかく作った前髪が!


「じゃあ今年はいらない?」

「んなこと言ってねぇだろ、サボるな」

「うー」


そろそろネタ切れの私は、今年のプレゼントを選ぶのが大変です。




1月13日
HAPPY BIRTHDAY 花宮!


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