影の影響力 (1/3)
「はい皆お疲れさま!体冷やさないように汗拭いて!」
最終Q前のインターバル、カントクさんは気丈に振る舞っていた。
「6点差か。」
「ああ。難しいな…」
「なかなか点差が縮まらないけどまだ終わったわけじゃないのよ!シャキッとしなさいシャキッと!」
それでも、選手らの表情は明るくなかった。
『(…無理もないか)』
追い付けない、追い越せない。
点差以上に、そういう精神的なダメージが彼らにとっては重かった。
『そう考えると……』
やっぱテツヤって凄いんだな。
スッゴい影が薄いのに、コートにいると居ないとじゃチーム全体のモチベーションが違う。
「次はメンバーチェンジをするわよ」
『ん?』
カントクさんはオレを指差して言った。
『オレですか?』
「そ、あなた。黒子君が起きてね、出たいんだって」
『テツヤが……』
言われて気が付いた。
確かにテツヤは起きて、ベンチに何食わぬ顔で座っていた。
包帯が痛々しい……
『大丈夫なの?』
「直也君が心配してるほど酷くありませんよ」
『いや、でも…』
顔色悪いし。
「行かせてください直也君。ボクは、火神君の影になるって決めたんです」
『テツ……』
彼の目は真っすぐだった。
オレのソレとは大違いの、覚悟に満ちた目。
『…わかった。いいよ』
やると決めたテツヤは、テコでも動かない。
『オレが十分に印象付けて来たからきっと動きやすいよ』
「そうですね。ありがとうございます」
テツヤは口元だけでほのかに笑った
ビ──
「インターバル終了です!」
選手は皆席を立つ。
彼らの目には、さっきまでの陰りは無かった。
テツヤがいるだけで、
こんなにも変わるんだね。
『そーいうとこ、尊敬するよ』
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