宣戦布告 (3/4)
『異議ありだよ、真太郎』
最後の言葉がどうしても気になって、オレは火神より前にずいと出た。
「………なに?」
眼鏡のブリッジを上げた指がぴくりと動くのが見える。
『歴史はね、繰り返すためにやって来るんじゃないよ。歴史は……』
『歴史は、変えるために巡ってくるんだよ』
ああ。
オレは、これほまどで人を睨んだことが今までにあっただろうか。
ギリリて噛んだ奥歯がイタイ。
「変えられると思うか?」
『思ってる』
去年の結果なんて知ったことではない。
オレはオレのやりたいようにやる。
「……………そうか」
『あ゛?』
暫くオレを見つめていた真太郎が、納得のいったように口元だけで笑った。
「お前の望む歴史とは、誠凜が秀徳に勝つという未来ではないな」
真太郎は一歩近寄って、オレに顔を近付けた。
「お前が変えたいのは、奴との歪んだ関係なのだよ」
そう言って彼はオレの頭をくしゃりと撫でると、再び距離を置いた。
その行為は、オレの毒牙を抜く。
「違うのか?」
『……間違いではない』
別にアイツと仲直りしたいわけじゃない。
できるなら、するに越したことはないけど。
『オレはただ、理由を聞きたいんだ……オレを嫌う理由を』
そのためには都大会で優勝して、全国大会にでなければならない。
京都に行ったアイツに会うためにはそれしかないんだから。
『秀徳に勝ちたいってのも、オレには重要なことだけども』
じゃないと全国大会には行けないから
「……落ちましたよ」
いつのまにか落ちていたクマのぬいぐるみをテツヤは拾い、真太郎の手に乗せた。
「過去の結果でできるのは予想までです。勝負はやってみなければわからないと思います、緑間君」
「……黒子」
『テツヤ…』
険しい表情の真太郎はテツヤを見つめる。
そうさ。
可能性が残ってるなら、試したっていいじゃないか
「やはり……オマエは気にくわん。何を考えてるか分からん目が特にな……」
真太郎は困ったように眉を寄せた。
そういえば、彼は昔からテツヤとのパスの受け渡しが苦手だった。
「言いたいことは山ほどあるが、ここで言っても虚しいだけだ。まずは決勝まで来い」
真太郎はテツヤとオレを交互に見つめて言った。
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