オセロゲーム | ナノ
宣戦布告 (2/4)





「……!」


「オイあれ……」


『んー?』


館内が急にざわつき始め、同時に客も増えた。


「来たぞついに……今年は特にすげーってよ……」


「東京都三大王者の一角、東の王者…秀徳高校……!!!」


観客席からは不撓不屈の文字が書かれた幕がかけられていた。


「出たな……!」

『威厳あるなー…』


選手として選ばれたもの達は皆堂々としている。
流石、越えてる場数が違う。


「ちょっと一年同士アイサツ行ってくるっスわ」

『オレもー』

「ああ……あ゛!?」


何となく返事してしまった主将なんて軽くスルーして、火神は真太郎の前に立った。
オレは火神君の後ろに若干隠れるような位置にいる。


「よう、オマエが緑間真太郎……だろ?」

「そうだが、誰なのだよキミは?」


知ってるくせに真太郎はあえて知らないと言う。多分、プライドってやつなのだろう。


『(高尾君も笑い堪えてるし)』


まあ…かくいうオレも堪えてるんだけど。


「……?」


火神がおもむろに手を出した。


『握手?』


それにつられて、真太郎も手を出した。
やはり握手だろうか?





 キュッ……





「……」


『ちょ、火神っ!』


火神は真太郎の手の平にマジックで”せいりん10ばん火神大我”と書いた。きったない字だとかは置いといて。


「なっ……!?」

『なにやってんの!?』


オレは慌てて真太郎の手を掴むとごしごしと擦った。


『……あ、ダメだ。落ちない』


油性マジックで書かれた文字は、ちっとも消える気配がない。


「フツーに名乗ってもいかにも「覚えない」とか言いそーなツラしてるからなオマエ。センパイ達の雪辱戦の相手にはキッチリ覚えてもらわねーと」

「……フン、雪辱戦?ずいぶんと無謀なことを言うのだな」


真太郎は火神に向き直ると、オレから手を離した。


「あ?」

「誠凛さんでしょ?てか、そのセンパイから何も聞いてねーの?誠凛は去年決勝リーグで三大王者全てにトリプルスコアでズタズタにされたんだぜ?」

『トリプル……』


横から口を出していた高尾君。
その口から出た言葉はちょっと衝撃的だった。


「息巻くのは勝手だが、彼我の差は圧倒的なのだよ。仮に決勝で当たっても、歴史は繰り返されるだけだ」

『む?』


真太郎の最後の言葉に、引っ掛かりを感じた。


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