忘れてたボールの感触 (1/3)
「オマエ、黒子と知り合い?」
赤髪…ではなく火神というでかい男子が尋ねてきた。うわ話し掛けられた。やたら蛍光色の強いゼッケンを着ながら、気付かれないようにため息をつく。
『だったらなに?』
「オマエも帝光なのか?」
『オマエじゃなくて藤井 直也って名前があんの。…帝光だったけど?』
いや、別に。と火神ははっきりしない。オレは先生からボールを受け取りながら、まだ話し足りないようだった火神の話を受け流した。
体格差があれなので、ジャンプボールはしないでオレらから始めていいらしい。ホント適当だなおい。
「じゃ、藤井も強いのか?」
『帝光の人がみんなバスケができると思ってたら大間違いだよ』
「なんだよ、つまんねーな」
『つまんなくてけっこう。っつーかアンタ、バスケ部なんだろ?だったらテツヤの能力知ってんの?』
「知ってるぜ。この前試合したからな……アイツ、「キセキの世代」の六人目なんだろ?」
火神の言い方がいちいち癪に触る。
睨み上げてみたがいまいちキまらない。くそう体格差め。
「なになに直也、何しゃべって…」
オレと火神が話し込んでるのに気付いた柏木がやってきた。コイツの野次馬精神をどうにかして欲しい。
『柏木、シュート率良いほうか?』
「シュート?わりと…」
『じゃあオマエがスモールフォワードな』
「え、えっ…なに?スモール…ちっちゃいの?」
『点取り専門の奴のこと』
「俺がやるの?直也は?」
バスケは専門外らしい柏木は聞き慣れない言葉と、急にやる気を出したオレに戸惑ってるようだった。だからっていちいち気に掛けてはやらないけど。
『オレは………』
火神を見上げたまま、ニヤリと笑う。
『こいつ抑えるわ』
バスケをするにあたって、楽しいとか負けたくないとかっていう感情は湧かないけど、コイツに一泡吹かせたいって思った。
この「オレ最強」みたいなくだらない自信をへし折りたかった。
「火神君。ナメてかかったら痛い目見ますよ…」
「は?どういう意味だよ黒子」
「試合をすれば分かります」
火神の後ろからひょっこり現れたテツヤがオレをちらりと見て言った。突然現れたテツヤに火神は驚いたようだった。まだテツヤの影に馴れてないんだな。
「(……あのひょろひょろが?)」
黒子が懸念する理由が分からない。
っつーか、あとの3人……アレもバスケ部だったような?
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