後半も全力 (3/3)
『おっ』
新協が久しぶりのスリーを決めた。
『カントク、得点見てみて』
「あらっ!?」
いつのまにか点差は一桁に。
カントクさんも考え事をしていたのか、オレに言われるまで気が付かなかったようだ。
「黒子君!ラスト5分いける!?」
「……むしろけっこう前から行けましたけど……」
「ゴメン!じゃゴー!!」
慌てるカントクに、落ち着いてるテツヤ。
「交代です!!」
テツヤはゆっくり立ち上がると、コートの中に溶け込んでしまった。
「っくそ、また出やがった……どーなってんだあのパス!?」
「最後まで気ィ抜くな!攻めるぞ!!」
テツヤが加入したことで、選手らの動きにも変化がでる。
「ヤダ!負けルのゼッタイヤダッ!」
最後の大勝負。
ここは外せないと、パパは高く高くとんだ。
「キセキの世代にガッカリとか言ってたけど、チョーシこきすぎだね!」
火神も、パパに対抗すべく足に力を入れる。
そして…
「アイツらの方が……断然強ぇーわ!!」
この試合で一番高く跳んだ火神は、とうとうパパのシュートを叩き落とす事ができた。
「試合終了────!!!」
「誠凛高校の勝ち!!」
「「「ありがとうございました!」」」
挨拶を終え、戻ってくる選手らの表情は明るかった。
『ふぅー…やっと終わった』
ずっと入りっぱなしだった肩の力が一気に抜けていくのがわかった。
『…………?』
ただ、観客席の方から熱い視線だけが気になった。
『気のせいかな?』
気のせいだといいな。
オレは客席を見渡したけど、視線の犯人は見つからなかった。
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