スタートから全力 (5/5)
「またダメだ!!さっきから全然だぞ!?」
「全然入んねーし、外国人っても大したことねーな」
得点に繋げられないパパをみて、ギャラリーからは不満の声があがった。
「また外した!!」
「ナんだヨもうっ!ムカツク!!」
「クサるなよ、ブロックされてるワケじゃねーんだDF!!」
イライラしてきた新協の選手もだんだんプレーが雑になってくる。
『乱れてるなー』
火神のディフェンスに、完全に踊らされてるのがわかる。
それに、
『小さいからってバカにしてると、痛い目みるよ?』
新協の人達、パパに気取られ過ぎてうちの子の存在忘れてるだろ
シュパッ!
伊月が放ったボールはパパの目の前で消える。
否、テツヤによって軌道を変えられたのだ。
「え……?ええ??」
「……なっ」
「え……!?」
新協や観客が呆気にとらるているスキに、火神君はダンクを決めた。
「……!?そーいやあんな奴いたっけ……!?てか今どっから……!?」
「くっ……とにかく一本!返すぞ!!」
リスタートは新協から始まる。
『ダメだぞ。誠凜のパスの正体も分かってないのに…』
普段通りパスを出したら、またスティールの餌食になる。
『ああ、ほら……』
「なっ……」
テツヤが弾いたボールはゴールまで高く跳ね上がった。
「ウソだろ!?」
『ウソついてどうしろってんだよ』
高く上がったボールを、火神は掴んでリングの中に叩き込んだ。
『つーか、まだ予選一試合目だっつーのにダンクはやり過ぎだろ…』
そんなとこしなくても、パパ以外は所詮雑魚なんだから。
「くそっ……!誠凛ってこんなに強かったか!?」
第1Qのおわる頃、新協はやっと誠凜の強さを認めたようだ。
『あら、あと3秒じゃん』
時が経つのは、案外早いんだねぇ
「第1Q終了――!!」
現時点での点差は15点。
これなら、少しくらいサボっても問題なさそうだ。
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