目標を掲げて (3/3)
「藤井はなんでそんなに興奮してんだ?」
『だって主将たちがあんな人を可愛いっていうから…』
「人?何言ってんだ?」
『え?』
話が噛み合わなかった。
…携帯で見ているのは、人じゃない?
『ちょっと見せてください!』
オレは主将から少々乱暴に携帯を奪った。
『にゃ、ニャンコさん!!』
「おっと」
あまりの可愛さに携帯を落としそうになったが、主将がキャッチしてくれた。
「……ゴメン次」
「次……」
言われるままに携帯を操作する
そして画面に現れた人物を見て、主将達の顔色は変わった。
「……!?」
「名前はパパ・ンバイ・シキ。身長200cm、体重87kg。セネガル人の留学生よ」
「セネガ……でかぁ!!200cm!?」
「アリなの!?」
「留学って……てゆーかゴメン、セネガルってドコ!?」
『アフリカ西端の共和国、首都はガタール。もとはフランス領で鉱石とか落花生の産地です』
ちょっとインテリなところを見せてみる。
と言っても、さっき携帯で調べたのだけれど。
「でかいだけじゃん?」
『……』
誰も聞いちゃくれない。
オレ、ちょっと悲しい…
「このパパ・ンバイ……なんだっけ?」
「パパ・ンバ……」
「話が進まん!黒子くん、なんかアダ名つけて」
「パパ……お父さんで」
「何そのセンス!!?」
『っくく……実にテツヤらしいニックネーム』
お腹を抱えて笑った。
まあ、そんなところも好きなんだけど。
「だからこのお父さんを……聞けよ!!」
『あだっ!』
笑いを堪えているのは皆同じなのに、オレだけ叩かれた。
「特徴は背だけじゃなくて手足も長い。とにかく「高い」の一言に尽きるわ!戦力アップに外国人選手を留学生として入れる学校は増えてるわ。次の相手の新協学園も去年までは中堅校ってカンジだったけど……たった一人の外国人選手の加入で完全に別物のチームになってるわ。届かない……ただそれだけで誰も彼を止められないのよ」
カントクの説明に体育館は静まり返ってしまった。
「……あのね、だからって何もしないワケないでしょ!!っわけで……火神君と黒子君の2人は明日から別メニューよ」
「別メニュー……?」
『そ、火神君はオレと水戸部先輩とでね』
この別メニューはオレの提案でもある。
お父さんを抑えるための、火神君にピッタリなメニューだ。
「予選本番は5月18日!!それまで弱音なんてはいてるヒマないわよ!!」
「「「おう!!」」」
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