買ってきて (5/5)
『よし。これで筋トレとフットワークの三倍は免れたな!』
「ああ、ホントだよ…」
「それはよかったね」
奮闘虚しくあっさりとテツヤがパンを買ってきたことで、みんなテンションが低かった。
『まあまあ皆……』
こればっかりはフォローのしようがない。
『あ、じゃあさ……』
「ん?」
『パンを買ったんだから、オレってここに居続ける必要はないんだよね?』
「んーそういうことに、なるかな?」
降旗が子首を傾げて答えてくれた。
それはつまり。
『帰ってもいいって事かな!?』
「あー?いーんじゃねぇの?」
火神が素っ気ない返事をした。
会話が成り立ってるのが不思議なくらい。
『言ったね?』
オレは思わずニヤリと笑う。
『それじゃあ、帰らせてもらうから』
だって、愛しのロールケーキが待っている。
『ただいま柏木!』
「お帰りー早かったね」
『終わってないけど切り上げてきた!』
携帯を弄ってる柏木の向かい側に、オレはさっさと座ってフォークを袋から出した。
『まさかとは思うけど柏木!』
「なんだよ?」
『食べてないよね、オレのロールケーキ!?』
「疑り深いなー食ってないよ」
ため息混じりに柏木が言った。
でもその頬っぺたに白いモノがついてるのは気のせい?
そして心なしかクリームの量が少なくなってるのは目の錯覚か?
『………まあいいや』
オレはやっと、ロールケーキにフォークを差した。
『どうしよう……』
ここは男らしく4等分くらいに切り分けるべきか。
それともちょっと切って食べるべきか……
悩んだ。
そして、
キーンコーンカーンコーン……
授業開始五分前のチャイムが鳴った
『う…嘘だろー!!?』
結局、切らないで口に詰め込んだ。
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