買ってきて (1/5)
『あー…やべーよ筋肉痛』
ちょっとしか出てないのに背筋が筋肉痛だ。
オレは椅子に深々と腰掛けた。
『今日の授業は寝てようかな…』
なんて考えていると、いつもの人間スピーカーがやってきた。
「おっはよう直也!昨日は試合だったんだったてね!どうなの、勝った?負けた?」
『………おはよう柏木。勝ったよ』
「やっぱり?そうだと思ったんだーオレ!だから頑張ったご褒美に…」
『?』
パンパンに膨れたエナメルバックの中から、柏木は何かを取り出そうとごそごそする。
「…あ、あったあった」
『なんかくれんの?』
思わず身を乗り出す。
「じゃしゃーん!セブンのプレミアムロールケーキ!!食べたかったんでしょ?デビュー戦を勝ち抜いた直也にプレゼントだよー」
『オマエ…オレのために……』
クリームたっぷりのロールケーキをもらって、思わず柏木に抱きつきたくなった。
「嬉しい?へへっ、キセキの世代とか言う奴を1人倒したんだろ?だったらこれくらいしないとなっ!」
『………いやいやちょっとまて』
満足感に浸る柏木。
しかしオレは奴の言葉に疑問を持った。
『なんで、オレが甘いもの好きでしかもそのコンビニのロールケーキを食べたがってるとか、昨日試合があって、それはキセキの世代との初試合だったとか!!なんで知ってんだよ!?』
「いやー、だって他でもない直也だよ!そのくらい知ってて当たり前〜」
『やめろ!どさくさに紛れて抱きつこうとするなキモチワルイ!』
「あ、オレにそんな態度取っちゃってイイのかな〜?」
ニタリと笑って、柏木はロールケーキをカバンに入れようとする。
『わっ、わっ…ダメ!ごめんなさい柏木!オレすっごく嬉しいくてめっちゃ感謝してるから!!』
だからロールケーキ頂戴!
と、両手を合わせて拝むように柏木に懇願した。
「仕方ないなぁー」
『サンキュー柏木!』
柏木はやっと、オレにロールケーキを渡してくれた。
『早速食べていいかな……』
お昼休みまで待てなくて、オレはパッケージに手をかけた。
キーンコーンカーンコーン……
しかし開けようとした瞬間、チャイムがなってしまった。
「あらー残念だったね」
『オマエがもっと早くくれればよかったんだよ!』
仕方ない。
お楽しみは昼休みに持ち越しだ。
.
prev|back|next