帰り道 (2/5)
「あっはっはっはっ」
『いつまで笑ってんだよ黄瀬っ!』
オレを散々からかったあと、黄瀬は暫く笑いが止まらなかった。
むしろドツボにはまって抜け出せてない。
『オレすっげー恥ずかしかったんだけど!』
誰がオマエの彼女や!ええ!?
と、男の最大の急所に蹴りを入れた
「あ、の…マジ、すんまっ…せん、し……た………」
『ざまーみろ』
売れっ子モデルの彼は内股になって悶絶する。
『……で?聞きたいことがあったんじゃねぇの?』
めんどくさいからさっさと話せ。
そんで、できればもうオマエとは会いたくない。
「ああ、それはもういいっス」
『は?』
「ホントは、一度辞めたバスケをなんでまたやり始めたのか聞きたかったんスけど……もういいっス」
『気になんないの?』
聞かれても答える気はさらさらないけど…そこまで言われると、逆に気になる。
なぜそんな事が聞きたい?
「だって……」
再び歩みを進め、黄瀬は話し始めた
自分がレギュラー入りした時、それと同時に二軍へ降格した同学年の奴がいると誰からか聞いた。
そしてソイツは、それをきっかけにバスケ部を辞めたという。
「はじめは、辞めた奴の事なんてどうでもいいと思ってた」
けど、部活を辞めたはずのソイツの回りには、いつもバスケ部の誰かがいた。
シュートフォームを見てほいしという奴、テーピングの巻き方を教えてと尋ねる奴、お菓子を一緒に食べようと遊びに来る奴………
それが許せなかった。
「レギュラーであるオレより、ソイツの方が彼らと仲が良いなんて…不公平っしょ?」
だからオレは、藤井直也という人間が嫌いだった。
さっさと消えてくれと、バスケから遠く離れたどこかへ行ってくれと、心の奥で願ってた。
「…………けど、」
『けど?』
そこで一旦区切った黄瀬は、オレを見つめてクスリと笑った。
「試合してみたら、アンタの好かれてる理由が分かった気がするんスよ」
『……なに、それ?』
好かれてるなんて、一度も感じたことないぞ?
「いやね、ココがそうだから!っていう確信はないけど……」
とりあえず、黄瀬はなんかが分かったらしい。
『ワケわかんねー』
勝手に納得する黄瀬。
オレはなかなか好きになれない
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