昔々のことでした (2/3)
『──で、話とはなんだね黄瀬君』
バスタオルみたいに大きなタオルを貰ったので、それで頭をふく。
「……藤井って、なんでバスケ辞めたの?」
『……………なんだって?』
「だから、辞めた理由!」
『…………あ、ごめんもう一度言っt「オレで遊んでるんでしょ藤井!」
『そんなに怒ることないじゃん』
両手をグーにして怒る黄瀬。
それがなんだか可笑しくて楽しい…
コイツの扱い方分かったかも。
「なんでも聞いてくれるんでしょ!オレの話!」
『ちょっと待て。なんでもと言った覚えは無いぞ』
それに、質問に答える義理もない。
「でも知りたい!ねえ何で!?」
『しつこいなぁ、もう』
仕方ない。
少しだけ、話してやろうか。
オレがバスケ部を辞めた理由。
『アレは二年になったばかりの…春だったかなぁ……』
「ふんふん。」
洗いかけのタオルは黄瀬にまかせる。
バスタオルは肩にかけた。
そして、昔の記憶を手繰り寄せる。
『"キセキの世代"と呼ばれ始めた彼らと一緒に、練習試合をしたんだよ』
黄瀬がいなくて、テツヤもまだ青かった時だ。
『相手は結構な強豪でね。珍しく接戦だったんだ』
でも勝った。
反省点はいくつかあるにしも、アイツの奇策のおかげで大差つけて勝ったのだ。
『それで、終わればよかったんだけどねぇ』
「終わればって…なんかあったんスか?」
『その試合結果に納得いかないヤツがいたんだ。』
「直也、お前は今日何点とったんだい?」『アイツは、苦戦した責任をオレになすりつけやがった』
確かに、オレはあの時ノルマの半分しか点数を入れてなかったけどさ。
『皆は「勝ったからいいじゃねぇか」って言ってたけど、アイツの性格考えると……許せなかったんだろうなぁ。オレのこと』
「足を引っ張ったから?」
『うん。そう』
君は邪魔なんだよ。
と、面と向かって言われたんだ。
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