影の影響力 (2/3)
『いや〜……さすがだなぁ』
最終Qが始まってもう5分が過ぎようとしていた。
「慣れかかってたのにまた元のウスさに戻ってやがる……!第2・3Q丸々20分ひっこんでたから……!?」
テツヤの大活躍で勢いの戻った誠凜は少しずつだけど確実に、海常に近づいていた。
そして、
バッ
『お、アレは入るぞ…』
日向のシュートは難なくリングをくぐった。
『やっと追い付いた……』
「同点…」
「同点だ───!!」
海常からも、誠凜からも、驚きの声が沸き上がる。
さぞや、黄瀬君は悔しがってるんだろう……
『(いや違う)』
黄瀬は悔しがったりはしなかった。
「黒子……」
火神とテツヤはまた、連係でバックチップをしようとしたが、
バッ
『見ぬきやがった』
悔しがるどころか、本気になっちゃったようだった。
「オレは負けねぇスよ。誰にも、黒子っちにも」
この本気の一撃によって、点取り合戦はまた始まった。
『無尽蔵かよ、あんたら…』
追い付き追い越され、お互い一点も譲らない緊迫した戦いが暫く続いた。
『あ、あと15秒じゃん』
気付けば、あと数秒。
98‐98の同点。
「時間ねぇぞ!!当たれ!!ここでボール獲れなきゃ終わりだ!!」
「おお!!!」
場内はさらにヒートアップする。
カントクさんも、ベンチから声を張り上げる。
「守るんじゃダメ!!攻めて!!」
あと7秒……
その時、主将に異変があった。
『(足がもつれたか…)』
ランガンに入ってからほぼ休みなしで走りっぱなしだったから、ジャンプできなかったようだ。
バッ
ピンチの主将をカバーするように、火神はカットをした。
「なっ……」
「うわぁあ獲った!!」
「マジかよ!?」
火神はそのままドリブルで攻めていく。
しかしテツヤと火神の間には黄瀬が立ちはだかる。
『一旦テツヤにパスして、間合いが良くなったら返してもらうのか?』
前半戦に使ったあの連係をまた使うのか?
それとも、
『また、なんか思いついたのかな』
あと2秒……
テツヤがリング前にボールを放った。
一見、パスミスのようだけど
『アレも、ちゃんと計算されてる』
テツヤは…
信頼してんだな、火神を。
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