キセキVS元キセキ (4/5)
「藤井!!」
『うん、なんだい?』
「今、なにやったんスか!?」
『なにって…………ほっ!』
悔しそうに立ち尽くす黄瀬を尻目に、オレはレイアップ。
『君のボールをスティールしただけだよ?』
シュートしたオレは、再びコート中央まで戻る。
そこには黄瀬が居た。
「スティールって……そんなハイリスクな……」
『ハイリスク、ね……』
確かに。
ドリブル中の相手からボールを奪うなど、誰でもやりたがる技じゃない。
失敗したら、オフェンス側が有利になるし……
「その伸ばした手が、ボールじゃなくてオレの手に当たったら?」
『ファールになってたね』
オレと黄瀬が喋ってる間も、試合は進む。
ボールは黄瀬の手にパスされた。
ダム、ダムと…黄瀬は挑発してくる
「もしタイミングがズレてたら…」
『ボールに手が当たって突き指してたかもね』
でも、そのくらいスリルがあったほうがイイだろ?
オレはニヒルに笑う。
「……イカレてるっ」
顔を引きつらせた黄瀬は誰かにパスを出した。
『お褒めの言葉と受け取っておくよ』
オレと黄瀬がこうして話していると、せっかく縮まった点差がまた開いてしまった。
再び6点ビハインド。
「怖くないんスか?」
『全く怖くない』
ニヤリと笑って断言したら、ますます変なモノでも見るような目で見られた。
『…オレの勝手だろ?』
「あっ!」
オレはボールを奪いに、黄瀬から離れた。
ヒュッ
────パシッ
「まただ!」
「今度はカットされた!?」
オレは奪ったボールを持って攻める。
そして、ここも安全策としてレイアップをした。
『オレはね、黄瀬…』
「?」
リングをくぐった後、誰にも拾われないボールを眺めながら言った。
『得点や勝利が欲しいから…バスケをしてるわけじゃないんだよ』
「…………は?」
意味分からねぇよって顔してる。
まあ当たり前だよね。
「じゃあなんで……」
『ん?』
なんでバスケやってんのかって?
んなもん……
『ひ・み・つ』
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