キセキVS元キセキ (3/5)
ガコン!『「「
あ゛!!!」」』
高く高く上がったボールは、リングに弾かれてそのままコートの外へ。
『あ〜〜〜』
オレの必殺ロングシュート……
やはり、あの占いオタクの様にはいかない。
「何やってんだ藤井!!」
『すみませんっ主将!』
「しっかり決めろよバカ!」
『ごめんなさい!でも火神君にだけはバカって言われたくなかった!』
「なにやりたかったんすか藤井!?」
『うるせーよ黄瀬』
「オレだけ睨み返された!?」
近くにいた火神が猛ダッシュでやってきて、オレの頭を掻き回す。
めっちゃ恥ずかしい!
めっちゃ恥ずかしい!
しかもすっげえ多方面から怒られてるよオレ!
「外れたものは仕方ない。でも次はちゃんと決めるんだよ?」
『伊月先輩………』
肩に手を置き、優しい言葉をかけてくれた伊月先輩。
でも両の目は全く笑って無かった。
『ごめんなさい………』
クラッチタイム中の主将より、こっちの方が怖かった。
ピッ
ホイッスルが鳴り、海常ボールから試合が再開される。
まだ6点ビハインドのまま。
ダムッ
サイドラインから投げられたボールは黄瀬に渡る。
オレは未だコートの中央にいる。
『つまり、黄瀬がシュートするには…』
オレを抜いて行かなければならない
「さっきの"アレ"でアンタの実力はよく分かったっス」
黄瀬が、余裕ぶっこいてドリブルで近づいてくる。
コイツ、わざとだ。
『わざわざ勝負を売りに来るのか?』
だったら、ご苦労なこった。
「どうせ取られないって、確信してるっスからね」
『その傲(おご)りが、自分の首を締めることになるんだぜ?』
オレの手がボールに届くまであと5歩……
4歩……
「アンタじゃムリっすよ」
オレの隣を抜けるまで2……1、
────来た!
シュッ!オレは、隣を過ぎ去る黄瀬の操っているボールに手を出した。
「!?」
そして黄瀬はそのまま数歩進んだ後、手に違和感を覚えて立ち止まるのであった。
『あれぇ?黄瀬君。ボールはどこいっちゃったのぉ?』
黄瀬の違和感の正体を知っているオレは、スッゴくねちっこく喋る。
「………藤井っ」
オレを振り返ってギリリと奥歯を噛む黄瀬。
とても悔しそうだ。
それもそのはず。
黄瀬の手中から消えたボールは今、オレの手もとにあるのだから。
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