キセキVS元キセキ (2/5)
主将は二重人格クラッチシューターで伊月先輩はダシャレ王の司令塔。
寡黙なお母さん肌の水戸部先輩にベンチに座ってる器用貧乏を極めた小金井先輩。
何て言うか、何て言うか……
「個性豊かっスね、誠凜って」
『…オレのセリフ取んなよ黄瀬』
オマエの方がよっぽど独特だっつーの。
睨み上げたら、鼻で笑われた。
「コートの中にいるんスから、ボケッと立ってないで相手してくださいよ」
『ああ。悪い悪い』
バッシュ履いて、ユニフォーム着て、ボールを追うのって久しぶり過ぎてさ。
ちょっと黄瀬の存在忘れてた。
「ったく……」
イライラしてる黄瀬は舌打ちした。
その時──
「黄瀬!」
「──っ!」
オレと火神がマークしてるの知ってるくせに、海常の4番は黄瀬にパスを出した。
『相当ナメられてるよね』
「十分なめてるっスよ、アンタのこと」
『んだと?』
両手でボールを持つ黄瀬はオレの出方を待ってる。
落ち着けオレ。
これは挑発だ。オレが少しでも動く素振りをすれば、奴の思うつぼ
だけど、
敢えてココは………
『お望み通りに』
「──!?」
わざとらしく右足を僅かに動かす。
すると黄瀬は、オレの左側を通って抜いていった。
『ふむ。いい反射神経を持って…』
「藤井!ボケッとつったってないで追い掛けろや!」
『…………』
スイッチオンした主将に怒鳴られてしまった。
パシュ
オレを抜いた黄瀬は、そのまま止まる事無くゴール下まで行ってレイアップ。
これはキレイに決まる
「お返ししてやれよ!!」
『ちょ、オレっすか!?』
エンドラインの主将から、コート中央にいポツンと立つオレに豪快なロングパス。
『ぐ………』
飛んできたボールを、ドッジボールをキャッチするように受け取る。
痛いっスよ主将……
「入れろ!藤井!!」
んなむちゃくちゃな。
でも、
『入れてやりますよ!』
オレは構えて、バックボードに書かれた小さな四角い枠に標準を合わせる。
あれ、名前なんだっけ…………
どうでもいいか
6点ビハインド。
ここは決めてやらないと、後々厳しくなるだろう。
それに
『一発屋は、こーいう時に働かないとね!』
ブンと、大きく弧を描くように投げた。
身長の低いオレではゴール下で競り合いしても絶対負けるし、普通にシュートしても簡単にブロックされちゃう。
だから、修得したこの必殺ロングシュート。
『あ、でも……』
ちょっと高く上げすぎたかな?
なかなかリングを潜らないボールに、ちょっとだけやきもきした。
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