戦って知ること (2/3)
「弱点……!?」
誰かがおうむ返しで聞き返した。
黄瀬の弱点があるのなら、是非とも聞かせて欲しいにきまってるのだ。
「なんだよ、そんなのあんなら早く……」
「いや……正直、弱点と言えるほどじゃないんですけど……」
『そうそう。弱点っていうか苦手分野、みたいな程度』
「それよりもすいません、もう一つ問題が……」
「え?」
「予想外のハイペースでもう効力を失い始めてるんです」
『……あらあら大変』
まだ始まって5分しか経ってないと言うのに。
「効力?」
「どういうこと?」
『まあ、それはオレがご説明しましょう』
すると皆の視線はオレに集まった。
やだな。ちょっと恥ずかしい。
『ミスディレクションってーのは、40分フルには発動できないんです。テツヤの薄さは別に魔法とか使ってるわけじゃなくて……ぶっちゃけ他に気をそらしてるだけ。一瞬なら案外誰でもできます』
オレを見ててください。
そういって片手でボトルを持ち、真上へ軽く投げた。
くるくる回って、再び手中に落ちる。
『ほら、もうオレを見てない』
「あ!」
「そっか、つまりコレが…」
『そ。テツヤはこれと同じことを連続で行って消えたと錯覚するほど自分をウスめてパスの中継役になる。けど、使いすぎれば慣れられて効果はどんどん薄まっていく』
「なるほど……」
「………」
『…カントクさん?』
オレの話が終わると、カントクさんはガタンと椅子を鳴らして立ち上がった。
「そーゆー大事なことは最初に言わんか――!!」
カントクさんは問答無用で、テツヤの首をシメ上げた。
それはもう、メキメキと。
「すいません、聞かれなかったんで……」
「聞かな何もしゃべらんのかおのれは――!!」
『ちょ、タップしてる!カントクさん、テツヤがタップしてるから離したげて!』
今まで黙ってたテツヤも悪いが、今は可哀相にしか見えない。
「T・O終了です!!」
テツヤの話をしたら、タイムアウトも終わってしまった。
『……あ、オレがボトルとタオル集めます』
「お、サンキュ。藤井!」
立ち上がり、コートに向かう先輩方からタオルやドリンクを受け取る。
去りぎわに、火神君は珍しく礼を言ってオレの頭を撫でていった。
『なんなんだ?』
火神君の意図してるところは、よく分からない。
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