やっぱり嫌い (4/4)
「それでは試合再開します」
ようやく試合が再開され、選手達がコート中に散らばっていく。
『なあカントクさん、なんでオレがベンチスタート?』
「だって藤井君。貴方みたいな一発屋を初っぱなから使っていけるほど、うちの選手層は厚くないのよ?」
『一発屋……』
まあ確かに。
オレのスタイルは、貰ったボールをゴールに運ぶだけの単純作業だからな。
『敵味方が疲弊した後半で、オレは単独で駆け巡れば良いわけだ。』
「そういうこと」
限界ギリギリの身体での単純(ボールを追い掛ける)作業は意外と辛いのだ。
そして、ウフフと笑うカントクさんの笑顔が怖かった。
『それよりカントクさん。黄瀬の"数値"視たんでしょ?どう?』
一番気になってた話をふったとたん、カントクさんは険しい表情になった。
「改めて視ると……バケモノだわ…黄瀬涼太!」
『それ、オレとどっち上?』
「そう、ね…ギリ黄瀬君かしら」
『ふーん………』
スペックは黄瀬の方が上か…
でも試合では負ける気などさらさらない。
オレには黄瀬がコピーできない技があるんだから。
『っつーか、外野がうるせぇんだけど』
「確かにね。コレが黄瀬君目当てなんだもの…」
そしてカントクさんは「ほかの選手からしたらまいっちゃうわよね。」と、肩をすぼめた。
「……てゆーか、テメーもいつまでも手とか振ってんじゃねーよ!!!」
「いてっ、スイマッセ――ンっっ」
いつまでも女子に手を振る黄瀬にイラついた海常の主将、笠松幸男は思いっきり足蹴りした。
「シバくぞ!!」
「もうシバいてます……」
『ナーイス主将さん』
足蹴りをする笠松と痛そうに背中を擦る黄瀬に、今日一番の笑顔でグッ!って親指を立てた右手を出した。
「てゆーか今の状況分かってんのか黄瀬――!あんだけ盛大なアイサツもらったんだぞウチは〜〜」
「いてっ、いって」
笠松さんはまだ怒りがおさまらないようで、今度は肩パンをした。
流石に可愛そうになってきた。
「キッチリお返ししなきゃ失礼だろが!」
その言葉で黄瀬のスイッチが入ったらしく、顔つきが変わった。
なんかするのかな?
そう思った矢先だった。
「こっちもアイサツさせてもらうっスよ」
『…………もしや!』
ボールを手にした黄瀬はグググと力をこめて…
ガシャ!
ダンクを決めた。
火神そっくりのフォームで。
「バカヤローぶっ壊せっつったろが!!まだくっついてんよ!!」
「いって、スイマッセン!」
『壊す気でいたのかよ……』
得点を入れたのに、黄瀬はやっぱり笠松にしばかれるのであった。
『……………』
ギシギシと揺れるゴールを見れば、火神より黄瀬の力が上だというのは一目瞭然。
「女の子にはあんまっスけど……バスケでお返し忘れたことはないんスわ」
キメ顔でその台詞とは……
『めっちゃムカつく。嫌い』
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