オレの背番号 (6/6)
『か、火神……君?』
どうしたのだろう。
日頃の鬱憤でも晴らすかのように、火神君はボールをおもいっきり黄瀬に投げつけた。
「おまえらの間に何があったかなんて知ったこっちゃねぇが……藤井を侮辱するのは止めてもらおうか」
「った〜〜。ちょ……何!?」
火神は怒っていた。
直也は弱虫なんかではないと、火神は知っていたから。
「……せっかくの再会中ワリーな。けどせっかく来てアイサツだけもねーだろ。ちょっと相手してくれよイケメン君」
火神は怒りに任せ挑発的な言葉を吐く。
「火神!?」
「火神君!!」
「え〜〜そんな急に言われても……あーでもキミさっき……」
少し考えたのち、黄瀬は上着を脱ぎネクタイを外し始めた。
「よし、やろっか!いいもん見せてくれたお礼」
「……!」
『……見せてくれた、か』
そうやって、オマエはオレの技すらも奪っていったんだ。
「……っもう!」
「マズいかもしれません」
「え?」
『ああ。"良いもん"を見たらしいから』
直也は忌々しそうに黄瀬を見つめながら舌打ちをした。
ガッ!案の定、黄瀬は火神と同じフォームでシュートした。
『しかも火神君以上のキレ…』
コピーとか真似とか、完成度がそんなもんじゃない。
完全に自分のモノにしていた。
「これが……「キセキの世代」……黒子、オマエの友達スゴすぎねぇ!?」
「……あんな人知りません」
「へ?」
「正直さっきまでボクも甘いことを考えてました。でも……数か月会ってないだけなのに……彼は……」
『予想を遥かに超える速さで才能は進化している。か、』
ただでさえ化け物みたいな強さを持ってるのにこれ以上巧くなろうと言うのか。
「ん〜〜……これは……ちょっとな〜〜」
「?」
「こんな拍子抜けじゃやっぱ……挨拶だけじゃ帰れないスわ」
困った顔をした黄瀬は黒子の方へと視線を向けた。
「やっぱ黒子っちください」
『……!?』
「海常おいでよ。また一緒にバスケやろう」
『はあっ!?』
黄瀬の突然の勧誘に、誰もが目を見張った。
「マジな話、黒子っちのことは尊敬してるんスよ。こんなとこじゃ宝の持ち腐れだって。無名の学校じゃもったいないスよ!ね、どうスか」
「そんな風に言ってもらえるのは光栄です。丁重にお断りさせて頂きます」
「文脈おかしくねぇ!?」
ぺこりと頭を下げて、黒子は黄瀬の誘いをキッパリ断った。
「そもそもらしくねっスよ!勝つことがすべてだったじゃん。なんでもっと強いトコ行かないの?」
「あの時から考えが変わったんです。なにより火神君と約束しました。キミ達を……「キセキの世代」を倒すと」
黒子はとても真剣な目で黄瀬を見つめる。
その瞳には迷いは無かった。
「……やっぱらしくねースよ。そんな冗談言うなんて……藤井になんか吹き込まれたスか?」
黄瀬は直也に敵意の眼差しを向けた。
「ハハッ!藤井は何も言ってねぇよ。それに、オレのセリフとんな黒子」
火神はおかしそうに笑い、藤井を庇うように代弁する。
「冗談苦手なのは変わってません。本気です」
黒子もまた、その覚悟に迷いは無かった。
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