鈍った身体と心 (5/5)
『センパーイ、タイム』
審判しているカントクさんにも分かるように手を上げて言う。
『紐が切れちゃったんで、オレ帰りまーす』
「は?えっ、ちょ……待っ」
試合中、オレがコートから出てバックを取りに行くもんだからカントクさんはあたふたしている。
でもオレは帰るぜ。
『慣れない靴でやると、すぐ爪がイっちゃうんで』
昔はそうなんないように調節しながら練習してたんだけどな。
身体、鈍ったかも………
「待ってってば!」
『………?』
体育館を出ようとしたら、カントクさんに腕を掴まれた。
「見てるだけでいいから最後までいて!」
『…………』
頼み込む強い眼差し。
そんな目で見つめられちゃ、断れないっスよ。
『……見てるだけなら』
とたん、カントクさんの表情が明るくなる。
するとオレも嬉しく………
って、オレはいつから人の心に左右されやすくなったんだ?
『(心も、いつものオレじゃない)』
久しぶりのバスケで、気持ちが高ぶってんのかな……
スコアボードの隣に立って試合を見ながら、落ち着かない胸に手を当てて思案した。
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