鈍った身体と心 (4/5)
ピ!とカントクさんのホイッスルが鳴る。そしてジャンプボールで試合が始まった。
「藤井!」
火神が弾いたボールを受け取った福田は、すぐにオレへとパスしてきた。
『オレかよ』
文句を言っても仕方ない。
ヘルプとか来られても面倒なだけなのでさっさとボールをぶん投げた。入ったらな上々。入らなくても誰かがリバウンド取ってくれるだろう。
「えっ!?」
敵味方、皆驚いてる。
全員の視線がゴールに集まった頃、派手な音を立ててボールがリングをくぐった。
「は、入ったぁ!」
「アレで!?」
「まぐれじゃねぇの……?」
初めて見た奴らは驚く。
ま、当然の反応か。
『そんなことよりリスタートお願いします』
いつまでもボケッとされても時間が勿体ない。オレは帰りたいんだ。
「あ、ああ…………」
慌ててボールを放つメガネの先輩。
しかしそれを火神がカット。
「藤井やれ!」
『またオレかよ!!』
お前だってできるだろ!
って反抗するまえにボールは既にオレの手のなか。
さっきと同じように投げる。
──入る。
『んお?』
さすがに、1分間でスリーを二回も入れればマークも厳しくなる。
『でも3人って、多くね?』
「オマエはこれくらいで十分っ」
「あと先輩にタメ語使うな!」
そしてオレは今日、初めてボールを落とした。
だって………
「し、白ボール!」
伊月と言うらしい先輩に叩き落とされ、ボールがラインの外へ。
「……どうした?足下見つめて………」
伊月先輩もオレの変化に気付いた。
だって………
『紐、切れちゃった』
片手で数えるくらいしかはいてないんだぞ?
なのに、右の靴ひもがいっそ清々しいくらいにキレイに切れていた。そんなに激しい動きはしてないと思うんだが。
ついてねーな。
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