鈍った身体と心 (3/5)
とりあえず体育で使うシューズ持ってきなさい、待っててあげるから!
と、マネージャーさん……ではなく相田リコというカントクに言われて、渋々シューズを持ってきた。ついでにカバンも。よかった、何も盗られてなくて。
「あれ?藤井じゃん、お前もバスケ部入ったんだ?」
『ん?………あ、』
体育館の隅でシューズを履いて靴ひもをきつく縛っていると、背後から声が聞こえた。
振り向くと……
『降旗じゃん』
なんだ。
体育で一緒にやった時、やけに上手い奴らだな。と思ってたら……やっぱり経験者だったんか。
『お前こそ、バスケ部だったんだ』
「ああ。あと河原と福田も」
『へえやっぱり。……まあ、オレは入る気無いけどね』
最後に靴ひもをもう一度結んで、途中で紐が取れてしまわないようにする。
「え?じゃあ何で…」
『カントクさんに「出てほしい」て、頼まれてさ』
カントクさん、あんまり嬉しそうに誘うものだから断るに断れなくて。
今に至るわけなのだ。
「ふーん。でもさ、それってつまり"あの"カントクにスカウトされたってことだよな」
『まあな』
女カントクさんにスカウトされたのがそんなに凄いのか?
去年、一年だけで都大の決勝までいったのは素直に感心するけど。
「あ!ほら藤井君に降旗君。試合するわよ一年対二年で!」
「あっ、はい!」
一年対二年とかぶっちゃけ無謀だろ
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