鈍った身体と心 (2/5)
「センパイ!コイツもバスケ部に入れてくれ……ださい!」
「「は?」」
オレを担いだまま火神は体育館へ入っていき、メガネの人とショートヘアのマネージャーらしき人の間に割り込むように掻け行った。
『オレは入る気はな……』
反論しようとしたが、これもまた火神のでっかな手によって口を塞がれてしまった。
「………うん、火神。とりあえずそいつを降ろしてやれよ」
「だいぶ血が頭に溜まってるみたいなのだけど?」
女の先輩は真っ赤なのに死にそうな顔をしてる(だろう)オレを指差して言った。この二人の先輩方は、火神の突拍子もない話に対しても冷静に対応していて凄いと思う。
「あ、すまん……藤井」
「そうそう。それでいいわ」
地に足が着いたオレは我知らず安堵した。
そして、舐め回すようにオレを見つめているマネージャーさんは口を開いた。
「基本的に今はまだ仮入部期間だから入退部は自由だけど?」
マネージャーさんはやっていってもかまわないと言ってきた。
冗談じゃない。
『オレ、入るつもりはないっスよ』
じゃあ何で来た?って顔を、先輩方はしている。
オレだって知らねぇよ。
担いできた火神に聞いてください。
「や、口ではこう言ってますけど!コイツ…マジで強いんス!」
オレの話なんかまったく聞いちゃくれない火神。
ほら、先輩困ってるだろ
「……本人は入る気はないみたいだけど?」
「でも、でも……」
やる気のないやつ無理に入れる必要もないだろ。と、男の先輩は思ってるのかもしれない。
………あ。オレ、人の心読むのわりと得意。
「…いいえ。いいえ、日向君。彼を連れてきた火神君は正解よ」
「は?」
『せ、正解?』
さっきからずっとオレをじろじろ見つめていたマネージャーさんは輝かせた目でこっちを見ていた。
「これは100人に1人の逸材……いえ、1000人に1人よ!!私がこの目で"視た"のだから、間違いはないわ」
『は?え、……えっ?』
目を輝かせた女の先輩は、オレの手を掴んで放さない。いったい、何を見たのだか
「とりあえず、あなたの実力を見せてもらうわ!」
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