後輩の敬意をおくる (3/5)
「すげ……え」
黒子と藤井の動きっぷりを見て、火神の口から声が漏れた
「何今頃言ってんのよ!いつもこんなもんよ!」
「じゃあ…藤井もいつもこんなもんなんっすか?」
「え?藤井君?……藤井君ねぇ」
リコは悩みながら試合を眺める
「今日はなんだか、イキイキしてるみたい」
パスを受ける藤井は、楽しそうにほんのり笑っていた。
「(気のせいかもしれないけど…)」
「なんだよコレ……」
「く……!?なんでだ……!?」
「コイツら……ウチの動きを完全にとらえてる……」
藤井と黒子の投入をかわきりに、誠凜の動きがよくなっていった。
「おかげ様でDVDデッキ一個オシャカにしたんで……」
『ホント、デッキから煙でた時はどうしようかと思いましたよ…』
「……!!」
「まいったね、どーも」
正邦のメンバーは苦面をつくる。
それほど彼らは自分等のスタイルに自信をもっていたのだ。
『特殊な動きってのは、必ずどこかにクセや無駄なモーションがでる』
「つっても、対応できるようになったのは後半からだけどな……」
「実際クセって言うほどあからさまなもんじゃねーし。クセに苦戦…」
『伊月先輩さむいからそれ却下で』
手で振り払う素振りを見せる藤井。
水戸部は、落ち込む伊月を慰めようとわたわたしていた
『だから…覚悟してくださいね、正邦さん』
いつのまにか相手から奪っていたボールを操りながら、藤井は宣言する。
『誠凜(うち)は強いっすよ』
「────なっ!!?」
「マジかよっ!」
『マジですとも』
藤井はハーフラインまで下がり、ボールを投げる。
これは大坪もブロックできない
─────パシュッ
スリーが綺麗な弧を描いて入り、70対69と誠凜がわずかにリードした。
『やっとだ…』
やっと、楽しくなってきた。
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