先輩の意地には (2/3)
「先輩の意地ね〜…は〜ん、いいね〜好きだわ〜そーゆーの」
「先輩ってもオレと一つ違うだけじゃーんっ」
「オマエもうマジ黙っとけ!」
坊主がケラケラと指を差して笑うと、彼の先輩はその頭を叩いた。
『へっ、ざまーみろ……って!』
「そーいうことは隠れてやりましょうよ、直也君」
『……さーせん』
胸の前でガッツポーズをしたらテツヤに叩かれた。
いや、だから痛いし…
「……受けて立とう。来い!!」
「んじゃ遠慮なく。行くぞ正邦!!」
それが雪辱戦の始まりだった。
30対31と、相変わらず油断ならない状況ではあるけど。
「何を深刻な顔してんの!みんなそんなヤワじゃないから大丈夫よ!余計な心配しないで声出しなさい!」
『そーだ、たった1ポイント差じゃんかよ』
「……ウス!」
深刻な顔してる火神はグーで殴られた。
「もらった!!」
正邦の選手がレイアップをキメにかかった。
「ああ───」
『いや、だいじょぶだ』
あんな甘々なレイアップシュートなんて直ぐ落とせる。
「さすかっっ」
「むっ……」
日向先輩がボールを叩き落とす。
「おおおスゲェ!!」
「止めたぁ!!」
こぼれたボールは伊月先輩が途中まで運びインサイドにいる水戸部先輩へ渡る。
『あれ……フックシュート?』
隣に座るテツヤに確認をとる
「そうですよ。ゴールに対して半身になるからブロックされないシュート」
『ふーん……』
教科書にのってるような基本に忠実なフックシュートを披露する水戸部先輩。
しかし春日という人にスクープショットですぐに返されてしまう。
『あ、でも小金井先輩もなかなか……』
一年生が抜けて、先輩達の動きがスムーズな気がする。
『これが、去年から作り上げてきな先輩方のスタイルか…』
ああいう流れのいいバスケは見てて飽きない。
嫌いなのは、帝光のような圧倒的バスケ…
『(って、昔のこと思い出してどうすんだよオレ)』
あそこには辛い思い出しかないんだから。
オレは気を紛らわせるために、試合に意識を向けた
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