ターゲットは火神 (3/5)
インターバルは2分。
降旗君がタオルを配り、福田君がドリンクを。
冷却スプレーとかテーピング系は河原君が持って待機。
オレは記録をつける係だからベンチの隅でカントクさんがこれから言うことを書き留める。
「まだ勝負は始まったばかりよ!」
選手の前に座り込んで、カントクさんは言う。
「陣型は攻守共このまま行くわ!ただパス回しにつられすぎてるからゾーンも少しタイトに。あと火神ファウル多い!」
「う……」
「相手に合わせようなんて腰が引けちゃ流れ持ってかれるわ。攻める気持ちが大事よ!!」
「「「「おう!!!」」」」
誠凜の気合いは十分。
『(次からはきっと、今よりずっとキツく当たって来るんだろうな)』
なら、オレのとる行動はただひとつ
ビ──ッ
「第2Q始めます」
「っし!」
ブザーがなり、選手は立ち上がってコートの中へ。
オレはカントクと主将を呼び止めた
『次、オレを出してください』
「日向君」
カントクは主将に意見を求める。
「んー…お前は今回、ベンチで休んでろ」
『え?』
「この正邦戦、藤井を出す予定は…無い」
『なん…で……』
確かにオレは、やる気はないけど…でも実力なら火神にだって引けをとらないくらいあるって、
先輩達だって知ってるのに。
「……いいのね?」
「お──」
カントクも主将の言葉には口を出さなかった。
ただ一言、いいのねと、確認を入れただけ。
『なんで?』
あんなにオレをしつこく勧誘してたクセに、なぜ…
『(オレはもういらないのですか)』
カントクも、アイツがやったようにオレを捨てるのか?
散々利用して、振り回して、噛み終わったガムのように捨てるのですか
.
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