ターゲットは火神 (2/5)
「くそっ…」
「どーなってんだ!?」
テツヤのパスを目の当たりにした正邦のメンバーは動揺を格差切れない。
『いや、あの人は別だ…』
伊月先輩をベッタリマークしてる、あの春日と言う人…彼は正邦の中でも独特なリズムを持つひとだ。
あの人からはなんか…緊張感というものが感じられない。
「まあまあ、落ち着きんしゃい〜…」
彼はボールをもらうと、ゆっくり喋って…
そして力感なくストンと落ちると伊月先輩をスルリとかわし、シュート。
バコッ!
「あららぁ…!?」
しかし火神君が弾き飛ばした。
『今度はファウルしなかった』
火神がアクションをおこすたびに、オレの心臓鼓動は速くなる。
『だって、3つだよ?』
まだ第1Qなのに、いくらなんでも取りすぎだ。
「いけいけ誠凜!!」
「おせおせ誠凜!!」
そんなオレの懸念を尻目に、誠凜の調子は良くなってきた。
主将がナイスフォローをする。
伊月先輩がシュートをきめる。
そして、
バチッ
「あっ!!」
テツヤが、坊主の持ったボールをスティールで弾く。
『やっとエンジンかかったのかな?』
最後に主将がスリーを決めて、第1Qが終了した。
どうやら今回のエンジンは、火神君ではなくテツヤのようだった。
「……そういえばさっきまたコイツがバカ言ったそうだな。スマンな」
岩村は津川の襟首を引っ掴んでぶら下げて、ご丁寧に謝る。
「ああ……いや……ぶっちゃけ……はい、去年のトラウマ思い出したし。けどまあ……全然いっすよ。乗り越えたし」
そこには、自信に満ちた顔が揃っていた。
19対19。
まだまだ誠凜はイケる。
『だから……』
いつまでもそんなデカい態度とってると、痛い目みるよ正邦さん。
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