忘れてたボールの感触 (3/3)
『はあ………』
始まって3分。
俺と火神は相変わらず対峙してる…
そろそろ飽きてきた。
「テメェ…よそ見しながらため息つくな!」
『だってよー、つまんねぇ』
「なっ……!!」
この一言がいけなかったのか、火神は強引にオレを抜いた。
『あっぶね!怪我したらどーする!?』
タダでさえ、昔アキレス腱やってんのに。
そんなのはお構い無しに火神がシュートした。
『やっと……8‐2だな』
今のが彼らの初得点だったりする。
「るっせ!今に見てろ……」
「火神君落ち着いてください」
「でっ!!?」
湧いて出たように現れた黒子が火神に膝かっくんした。
「ボールをもっと回してください。直也君を正面きって迎え撃つから直ぐに奪われるんですよ」
パスを出すんですよ。と、黒子はもう一度念を押して離れていった。
『……福田君達、火神以外のメンバーもマークしとくんだよ』
バスケ経験者らしいトリオに指示を出した。
『テツヤの本領発揮だから』
そしてオレがリスタートする。
柏木にパスしたのにテツヤにカットされた。
テツヤは直ぐに、火神じゃない誰かにパスする。
『(取られちゃった……)』
まあ、いいか。
「くっ……か、火神!」
トリオのマークが急に厳しくなった所為もあって、素人君は数歩も進まないうちに火神へとボールを渡した。
パシッ!
受け取った火神もまた、黒子へとパスする。
『オレとやるの、諦めちゃった?』
「んなこと、ねぇよ!」
火神はオレに背を向けダッシュ。
勿論向かった先はゴール下だ
『ははーん。アリウープね』
だが残念。
この距離はまだオレの射程範囲だ。
ガッ!
テツヤが投げたボールを、上がりきる前にキャッチする。
たしか、一試合につき5分だったからな、
…終了まであと10秒もないか。
「やべ!完全フリーだっ」
火神は慌てて走ってきた。
ふむ。このままドリブルでゴールへ行っても追い付かれてしまうのは目に見えてる
『だったら………』
オレはコート中央まで行って、呼吸を整えた。
『こうだ!』
そして、ボールをおもいっきり投げた。
ボールは大きな弧を描くことなく、まっすぐバックボードめがけて飛ぶ。
『(入るかな?)』
入らなくても、いいのだけれどね。
ガッガッ
───パシュ
電光スコアボードのブザーとボールがリングをくぐるの、どっちが早かっただろうか?
体育館中に沸き起こる歓喜の中、オレはそんな風にどうでもいいことを思っていた。
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