オセロゲーム | ナノ
一年越しの (2/3)





『なあ真太郎』


「なんだ」


真太郎はルーティングをしてボールの回転を確かめていた


『それ、オレのボールなんだけど』


「そうだな」


『知ってるなら返してくんない?』


「まあ待て」


真太郎は丁寧にセットすると、シュートした。


『別にオレのじゃなくてもよくね?』


どうせ外さないんだから。


「お前のボールだと回転の確認がしやすいのだよ」


『まあ、そのために溝を白く塗ったんだし』


普段からコイツみたいにフォームをきっちりつくって射つとかしないからな、オレ。


『そのボールが便利なのは認めるけど、早く返せ』


オレも練習したいんだ、一応。


「仕方ないのだよ」


真太郎は残念そうに、渋々返してくれた。


『ありがと』


受け取ったボールを、その場でオレらがアップに使ってるリングに投げた。

もちろん、片手で。




『入った入った』


入った瞬間、一瞬だけ辺りが騒然となったが、またすぐにいつも通りの騒がしさに戻った。


「まったく、ふざけた投げ方なのだよ」


『君のループの高さよりはまともなつもりだよ』


オレは口元だけで笑って、転がるボールを取りに帰った。









「あー、君が火神君っしょ?」


自チームに戻ると、火神君は正邦の坊主に絡まれていた。


「うっわマジ髪赤けぇ〜〜!こぇえ〜〜!」


『あ、うざいディフェンダーの人』


恐いと言いながら笑顔で話し掛ける彼は相当な変り者だと思う。


「あん?」


「主将ー!こいつですよね、誠凛超弱いけど一人すごいの入ったって」


坊主はけらけらと笑いながら手招きで向こうの主将を呼んだ。


「おーおー言ってくれるわねクソガキ……」


『まあまあ…落ち着いてカントクさん』


隣にいるオレに八つ当たりが来そうで怖い


「何でオマエいつも他校さんとからむんだよ!」


「今日はチガウ!ですよ!」


いつも問題の中心になっている火神は主将に怒られた。


「チョロチョロすんなバカたれ」


「あいて」


正邦の主将、岩村は坊主の頭をグーで殴った。


『(うわ、でか…)』


何というか、全体的にがっちりしててデカかった。
あと髭も剃ってほしい。


「すまんな、コイツは空気読めないから本音がすぐ出る」


「謝んなくていっスよ。勝たせてもらうんで。去年と同じように見下してたら泣くっスよ」


「それはない……それに見下してなどいない。オマエらが弱かった、それだけだ」


坊主以上に重みのある言葉で威圧する岩村。
まさに、あの後輩あってこの先輩あり。だと思った。


『カントク、時間が……』


ふと時計を見ると、もうアップの時間が過ぎようとしていた。


「いけない!ほら皆、練習はこのへんにして控え室行くわよ!」


カントクさんがホイッスルを鳴らして指示を出し始める


『まって。オレ、1(ワン)ゴールしかしてないぞ……』


準決勝なのに、やっちまった


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