一年越しの (1/3)
『おー…響くー』
どこまでも続く高い天井、そりたつ壁。
決勝戦の舞台にふさわしいスケールのデカさだった。
「やっべぇ〜超びびってきた…」
「会場も今までの学校体育館じゃねーし」
『会場なんてどこも一緒じゃねーの』
周りを見てそわそわする降旗と福田を見ると、こっちまで落ち着かない。
「そう言ったってな、俺達こういうの初めてだし…」
「そうそう。お前と違って馴れてないの!」
帝光の優等生とは違うんだ。
と攻め寄る2人。
なんだか顔が必死だった
『お、オレだって…こういうトコでの試合は初めてだよ』
「あ、そーなの?」
降旗が意外そうな顔で見てきた。
『レギュラーって言っても一年は殆どベンチだし…たまに、コンディションの悪い人と代わるくらい』
「へー」
「ポジションは?」
『だいたいどこでも。センター以外なら……』
なんでもやってたよ。と言うと、器用貧乏の小金井先輩みたいなタイプなんだねと福田が言った。
「でもさ、」
「いくら経験者の藤井がいるっつっても2試合連戦で相手は北と東の王者……」
「連戦以前に……一つ勝てるかもキツいよ……」
突然、2人はシュンとなってしまった。
『ちょっ、元気だせよー』
「うん………うん?」
『うん?』
シュンとなっていた降旗が、何かに気付いた
「お前、ボールは?」
『ボール?……あれ、ない』
ついさっきまで、アップに使っていたオレのボールが見当たらない。
『あそこだ…』
普通なら黒であるはずの溝が、白くペイントされたオレ特製のバスケットボール。
それが今、真太郎の手の中にあった
『うわっ…なんか火神君とにらみ合っちゃってるし』
…あいつ、よく他校さんと絡むよな
やっぱ目立つ風貌してるから?
『……目付きもすこぶる悪いからなぁ』
とりあえず、ボールを返して貰いに行こう。
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