「赤司」
「なんだ緑間」
「なぜ灰崎と藤井を一軍から降ろしたのだ」

オレは、ベンチに腰掛けて黄瀬と青峰の1on1を眺めている赤司の隣に座って同じように2人を見た。相変わらず黄瀬の上達ぶりには目を見張るものがある。

「正直灰崎は必要ない人間だったんだよ。選手としてはまあ有能かもしれないが素行が悪く扱いにくかったから」

それに、と赤司は続けた。

「黄瀬に負けてしまう前に自主退部させた方が灰崎のプライド的にはいいだろ?」
「…お前は優しいのか冷徹なのかよく分からないのだよ」
「何言ってんだ緑間、オレはいつだって優しいさ」

多分優しいと思ってるのは本人だけだと思うがそれをいうとまたねちねちと反論されるからあえて黙っておく。

「ではなぜ藤井も一軍から出したのだよ」

確かに灰崎や青峰ほどずば抜けた運動神経があるでもないし紫原ほどの高身長ってわけでもないが

「アイツの強さはヘルプやスティールにあるだろう」

それが縁の下の働き者として身を撤することにした奴の持ち味ではないか。藤井に花形プレーはできなくとも人並み以上のセンスと体力がある。現にその活躍だけで十分戦力になってるではないか。

「なにより、アイツはまだパスミスもファンブルも無かったはず」
「でもノルマの20点が取れなければ同じことさ」
「…なぜ藤井にはそんなに厳しいのだ」

たった一度のミスくらい、誰でもやることだろうに。青峰はファウルトラブルをよくやってるしオレのスリーだって完璧ではない。ソレに比べたら…

「直也にはコレぐらいが丁度いい」
「どういうことだ?」
「パスやヘルプってのは、オレたちのように1人でやってできるものじゃ無いからな。数多くの人とやって経験を積むのは悪くない」

赤司はにんまりと口角を吊り上げて笑った。お前が誰よりも藤井を大事に思ってるのは誰が見ても明らかだ。だが赤司、

「ちゃんと言葉で伝えてやらないと誤解されるのだよ」
「心配ない。オレの言葉なんて初めから届いてない」

赤司はまた笑った。これはなんの笑みなのかオレには分からない。ああ本当に、どうしてこうなってしまったのだろうか。



悪者は誰だ
(止まらない変化)

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